アマゾン・エフェクト(効果)―。急ピッチで事業拡大する米アマゾン・ドット・コムの攻勢を受けて同社に客を奪われた企業の業績が落ち込む現象を指す言葉だ。AI(人工知能)やIoT(インターネット・オブ・シングズ)などを駆使して暴れまわるディスラプター(破壊者)に突き動かされる形で、シャープや三菱UFJフィナンシャル・グループ、コマツなどが新たな事業に乗り出した。日本勢に勝ち目はあるのか。ITが急速に進化するディスラプションの時代は盛者必衰。先進ITをうまく取り込めば、だれにも逆転のチャンスはある。
AI・IoT活用戦---目次
シャープ、ローソン、コマツは「破壊者」に勝てるか
目次
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GAFAが奏でる破壊の序曲
破壊者はある日突然に、しかも思いもかけない分野から現れる。自社の事業領域やライバルを決めてかかる固定概念は命取りだ。アマゾン、グーグル、アリババが引き起こす破壊のインパクトとは。
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家電が無料になる日
電機
シャープは何の会社か。「家電メーカー」が現在の答えだろう。しかし数年後の模範解答はまるで違っているかもしれない。「家電メーカーと呼ばれたくない」。シャープの戴正呉社長が2016年の就任以来、社員に植え付けてきた意識だ。
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宿敵に迫った踏み絵
タクシー
「当社が先頭に立って試します。安心と分かったら声をかけてください」。2017年11月、全国ハイヤー・タクシー連合会の年末会合。副会長を務める第一交通産業の田中亮一郎社長が話すと、会場はしーんと静まりかえった。
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地銀、相乗り型で対抗
銀行
「GAFAの到来に備え、自ら革新的なサービスを創造するには、既存の銀行にはできないアプローチが必要だ」。三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)傘下でFinTechサービスの開発に取り組むJapan Digital Design(JDD)の上原高志CEO(最高経営責任者)は語る。
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AIで一発逆転狙う
中古品
突然現れた破壊者が競争のルールを変え、市場を席巻していた企業が存在感を失う。めまぐるしく攻守交代が起きているのが中古品売買市場だ。現在のリーダー企業はヤフーだ。個人間取引を仲介するネットオークションで9割に迫る圧倒的シェアを持つ。
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「楽しさ」磨き防御
外食
現金お断り、支払いはカードか電子マネーで―。完全キャッシュレスでセルフオーダー式の実験店舗「GATHERING TABLE PANTRY」を2017年11月に開いたロイヤルホールディングス(HD)。現金管理業務の手間を省いて店舗運営を効率化し、店長や店員の人手不足を解決するのが直接の狙いだが、実は…
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IT投資1兆円も
小売り
ボタンを押すだけで日用品や食品を注文できる「アマゾンダッシュボタン」、生鮮食品を最短で当日に宅配する「アマゾンフレッシュ」。米アマゾンをはじめとするEC(電子商取引)企業は既存小売業の領域を一段と侵食している。対抗策は外食と同様、店舗の価値を見つめ直しITでさらに価値を高めることだ。
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目指すは建機のアップル
機械
建機の製造販売から、建設現場のデータに基づく情報サービス企業へ。建機大手のコマツは建機業界のアップルとでも言うべき新しい市場の「創造者」を目指す。IoT技術で建機の稼働状況や掘り出した土の量、施工前後の現場の形状といったデータを収集。
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スマート枝豆で脱JA
農業
農業分野の破壊者はITサービス業界から現れた。モバイルやIoT関連技術に強みを持つ新興のオプティムだ。 「多くの農家にとってIoT農業は、ITベンダーが高額なシステム商品を売りつける敬遠したい存在になっていた。我々はIoTで本当に儲かる農業を実現したい」。
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「破壊」に終わりなし
デジタル破壊をめぐる8分野の戦いから、ディスラプションの時代を勝ち抜くポイントが見えてきた。既存の事業に捉われることなく、自らを破壊し続ける覚悟が必須だ。これまでに見てきた8分野でデジタル・ディスラプションに挑む企業の戦略は、攻守それぞれに3つの共通点がある。