写真:的野 弘路
写真:的野 弘路

2014年10月に上場したリクルート・ホールディングス。時価総額約2兆円の巨大企業は、市場から調達した資金で成長を加速させる。IT注力を宣言し、機構改革、人材育成、技術投資、M&A(合併・買収)を通じて変革を急ぐ。同社の改革が様々な業界に及ぼす影響は計り知れない。新生・リクルートが目指す真の姿に迫る。

図1 リクルート創業から上場までの年表
時代に合わせて事業内容を広げてきたリクルート
図1 リクルート創業から上場までの年表
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 一つの会社に晴れの舞台はそう何度も訪れることはない。過去に事件を起こした企業ならなおさらのことだろう。

 2014年10月16日、創業54年目で悲願の上場を果たしたリクルート・ホールディングスはこの日、間違いなく晴れの舞台にいた。

 同社の2013年の売上高は約1兆2000億円、従業員数は約3万人。この巨大企業を率いて、東京証券取引所の鐘を鳴らしたのは峰岸真澄社長(50歳)である。戦後最大の収賄事件とされるリクルート事件が発生した当時、峰岸社長は入社2年目の社員だった。

 上場記者会見で26年前の事件について問われた峰岸社長は、これまでの支援への謝意、今後の期待に対する責任を口にした。終始、冷静に対応していた峰岸社長だったが、苛立ちを隠せない場面もあった。

 「上場は人材流出を引き起こし、リクルートから『起業家精神』を奪うのではないか」。こう記者団から繰り返し問われた峰岸社長は、「起業家精神は我々の企業文化だ」と言い返すだけで、多くを語らなかった。

 改革は道半ば。だが、2012年4月に峰岸新体制に移行して以降、確実に変化の兆しが生まれた。IT企業への転身だ。ITを駆使した新事業を創出し、以前から定評のある営業部隊がこれを拡散。新たに生まれた歯車と古くからある歯車がうまくかみ合い始めた。

 峰岸社長が脳内に描く未来の企業像が徐々に見えつつある。ITベンダーさながらに技術者の採用・育成に注力し、ITを駆使した新サービスを投入する。変身を急ぐリクルートの今を見ていこう。

原 隆

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