情報システムの満足度を高めるカギは何か。戦略とプロセス、ITを同期させることだ。それには業務分析が必須だが若手でも担える。

 システム開発プロジェクトの「S(満足度)」に関する調査結果が本号の特集で報告された。SはSatisfactionを指す。Sを向上させるカギは別のS、「同期(Synchronization)」である。文字遊びを続けると、同期をとる対象は戦略(Strategy)、現場(Scene)、システム(System)という3つのSになる。

 同期がとれた状態とは何か。経営者が打ち出す戦略や方針、実行する現場(担当者とビジネスプロセスを含む)、経営者と現場に適切な情報を提供するIT(情報技術)システム、以上が矛盾なくつながり、それぞれの間で必要な情報が受け渡されていくことだ。

 同期をとるには経営者、現場部門(事業部門)、情報システム部門そしてシステム開発を請け負うIT企業、4者の対話が欠かせない。主に経営者そして現場と対話するやり方としてビジネスアナリシス(本稿では業務分析と訳す)がある。業務分析を入社3、4年目の若手に担わせることを狙った日本生まれの方法論があるので紹介する。

 業務改革やIT戦略策定などを支援するプロセスデザインエンジニアリングの渡辺和宣社長が12年以上かけて開発した「GUTSY-4」である。実際、社会人4年目の若手4人が顧客に当たる企業を訪れ、GUTSY-4を使って社長や社員と対話し、2カ月で現状プロセスの見える化を、4カ月で社長の要望に基づく新たなプロセスとルールの設計を、それぞれ果たした。さらに4カ月をかけ、詳細な新プロセスと新ルールを設計し、それに基づく情報システムを構築できたという。

 GUTSY-4の特長を一言で書くと、「階層化と詳細化の徹底」となる。業務分析の担い手は、経営者を皮切りに現場の部門長そして現場の担当者と順を追って対話し、戦略構想や要望や改善案を引き出しつつ、業務分析の結果を階層構造にまとめられる。

戦略、プロセス、要件を階層構造に

 各関係者の意見を聞きながら、段階ごとに詳細化していくため、「もれなく、矛盾なく、経営者の要望と現場の意見を織り込んだ成果物を作成できる」(渡辺氏)。各場面で使う書式や質問項目に加え回答例までを事細かに用意しており、「経験が乏しい若手でも業務分析をこなせる」(同)。

表 ビジネスアナリシス方法論GUTSY-4の概要
入社3、4年の若手でも業務分析ができる
表 ビジネスアナリシス方法論GUTSY-4の概要
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 前述の4者の間で同期をとるために、GUTSY-4においては4つのモデルを順に記述していく。まず「ビジネスモデル(顧客に価値を与える製品・サービスを開発・提供する仕組み)」を描き、事業戦略と業務課題をまとめた業務改革の構想を立てる。これを受けて業務課題を達成するためのプロセス改革を企画し、「ビジネスプロセスモデル」(ビジネスモデルを実現するためのプロセス、ルール、入出力情報など)を作る。

 プロセスとルールをさらに詳細化し、プロセス改革の計画を立てる。この段階の成果物は「IT要求モデル(事業戦略やプロセスから情報システムへの要求)」として利用でき、さらに詳細化を進めて「ITモデル(用意すべき情報とデータ、アプリケーション、基盤)」を記述できる。

 各モデルを作り、記述していく際には、上位のモデルから受け継ぐ「トップダウン」の情報と、当該モデルに関わる担当者から引き出す「ボトムアップ」の情報を付き合わせ、矛盾が出たらその場で議論し、解消する。経営者の要請や方針を受けて事業部長や部長が成功要因あるいは課題を吟味し、続いて部課長や係長が現場の改善案をプロセス、ルール、組織、人、ITに着目して検討する。