日本料理店の板前から大学院で博士課程を取得。IoT(インターネット・オブ・シングス)を駆使して世界でも珍しい「科学的おもてなし」を実現――。

 異色の経歴の持ち主は、がんこフードサービスの新村猛副社長(写真1)。日経情報ストラテジーが選出する「CIOオブ・ザ・イヤー」第12回の受賞者で、「ITpro EXPO 2014」3日目の基調講演「決定!CIO/データサイエンティスト・ オブ・ザ・イヤー2014 板前経験持つCIOと、文学部出身の分析のプロ、異色の2人が語り尽くすビッグデータ活用術」に登壇する1人だ。

写真1●がんこフードサービス 取締役副社長 新村 猛氏
写真1●がんこフードサービス 取締役副社長 新村 猛氏
(写真撮影:福島 正造)

 学生時代に調理場でアルバイトを経験し、社員となった後に、一念発起して同志社大学のMBAに社会人入学。外食産業の生産性や品質の向上に取り組むのが目的だった。そこで産業技術総合研究所(産総研)との共同研究をスタート。仲居さんなど従業員にセンサーを携帯させて位置情報を把握し、日本料理店の人員配置を最適化するなど、画期的な取り組みで成果を上げてきた。

 現在注目を浴びるIoTの先駆的な取り組みであり、かつ自社データを外部に提供して、分析結果を業務改革に活用するというオープンイノベーションの好例でもある。

 こうした取り組みの手本は実は医療業界。「医食同源とされながらも、医療機械を開発するなどして日々進化する医療に対し、飲食業界はまだアートの世界にとどまっている。ITやデータを駆使して科学的おもてなしを実現し、日本の強みにしたい」と意気軒高に語る。

 もう1人の登壇者である日本航空(JAL)Web販売部1to1マーケティンググループの渋谷直正アシスタントマネジャーは「データサイエンティスト・ オブ・ザ・イヤー2014」の第2回受賞者(写真2)。データサイエンティストというと、理系の職業というイメージがあるが、渋谷氏は文学部の卒業だ。気象予報士に憧れて文学部で計量地理学を専攻。調査や実験を通じて統計学を学んだ。

写真2●日本航空 Web販売部 1to1マーケティンググループ アシスタント・マネジャー 渋谷 直正氏
写真2●日本航空 Web販売部 1to1マーケティンググループ アシスタント・マネジャー 渋谷 直正氏
(写真撮影:村田 和聡)

 JAL入社後は、旅行代理店への営業を担当。その後Web販売部に異動し、現在は年間2億PVをたたき出すJALの巨大サイトへのアクセスログを分析に携わる。顧客ごとに異なる販促ページを表示するなどの1to1マーケティング施策で、売り上げ増に貢献している。

 渋谷氏の強みは統計知識を生かした分析者としてのスキルの高さだけではない。営業経験で培った仕事のセンスを生かした仮説立案能力、そして分析業務の経験が浅いメンバーを教育し、データサイエンティストに育てていくリーダーシップにある。

 「ネット企業などとは違う“普通の会社”の“普通の社員”が分析で成果を上げるには何が必要か」を考え抜き、独自の育成手法を編み出した。

 例えば、メンバーが統計を基礎から学ぶ過程で挫折しないよう、仕事でよく使う20の手法をリストアップ。実際のデータに当てはめて「原理は十分に理解していなくてもまず分析して結果を出す」ことを実践させる。その積み重ねで自信をつけさせ、次のステップに踏み出せるよう支援する。

 外部との連携を巧みに活用する新村氏と、社内人材の育成にたけた渋谷氏。アプローチは対照的だが、「手持ちのデータを収益に変える」ことへのこだわりは共通している。パネルディスカッションで、ぜひ2人のトークを楽しんでいただきたい。

【基調パネル】
決定!CIO/データサイエンティスト・オブ・ザ・イヤー2014 板前経験持つCIOと、文学部出身の分析のプロ、異色の2人が語り尽くすビッグデータ活用術
<10月17日(金) 10:00~10:50>

    【パネリスト】
  • がんこフードサービス 取締役副社長 新村猛氏
  • 日本航空 Web販売部 1to1マーケティンググループ アシスタントマネジャー 渋谷直正氏
    【モデレータ】
  • 日経BP社 日経情報ストラテジー編集長 小林暢子

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【昨年の基調講演】
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