失敗プロジェクトに再チャレンジ、成果創出にこだわる

 「分析プロジェクトで失敗した経験は?」という質問に対して、リクルートテクノロジーズの清水氏は「過去に例の無いプロジェクトで、納期までに成果を出せなかったことがある。『もう1回やらせてほしい』と手を挙げてアプローチを変えて再チャレンジし、成果を出した」とガッツあふれる仕事振りを語った。

 オージス総研の篠田氏は「分析結果を出しても現場で活用されなかったことがある」という経験を語り、「そうならないためには、事業のなかに入り込み、現場の方に当事者意識を持って絡んでもらうことが大事」とした。そのために仮説作りの段階から現場を巻き込むことに加え、「勘と経験でこれまで成果を出してきた現場の仕事を否定するのは絶対ダメ。日常業務に仕事を“1つ足す”だけでプロジェクトが回るような、スモールスタートにすべき」と話した。

 JALの木下氏は「一番落ち込んだのは、せっかく分析したのに現場にとっては“当たり前”の結果しか出なかったとき」と打ち明けた。この意見にはほかのパネラーも同意。リクルートテクノロジーズの清水氏は「当たり前の結果が出たときは『皆さんの今までのやり方の正しさがデータで裏付けられた』と現場の仕事を肯定したうえで、データに基づいて『なぜそうなのか』という理由を解き明かす。そうすることで現場の“受け入れ感”がぐっと増す」と語った。

 「データサイエンティストとしてどんな自己研さんをしているか」という問いに対して、JALの木下氏は「文学部国文学科出身なので、今の部署に配属されるまで分析には無縁だった」と語り、分析ツールの習得に力を注いでいることを明かした。「分厚い参考書も読もうとして挫折したことも。ある時点から『分析はツールがやってくれるもの』と割り切った。もちろんその裏付けとなる基礎知識は必要だが、ビジネスや現場の日常業務についてしっかりと学んでおくことも同じくらい大事では」とした。

 いずれも部署で定期的に勉強会などを開いている。「統計検定に全員で合格することを目指して週1で輪講を実施」(リクルートテクノロジーズの清水氏)、「大阪ガスのビジネスアナリシスセンターと一緒に、実案件をベースに手法を学ぶ勉強会を月1で開催。苦労談なども共有している」(オージス総研の篠田氏)といったユニークな取り組みも明かした。

 「私生活と仕事のバランスは?」というやや女性を意識した質問に対しては、全員が「プライベートのなかで分析のヒントが生まれる」と回答。リクルートテクノロジージズの清水氏は「子供が小学校に入って、専業主婦の友達が増えた。『ごはん食べよう』と言われると、自分は当然夕食だと思うが、彼女たちはランチを指している。人によって物事の捉え方が違うことが実感でき、人の生活を推測するようになった。それが分析の幅を広げていると感じる」と話した。

 データサイエンティストという仕事を楽しみつつ、粘り強く難題にも取り組み、コミュニケーション力を武器に周囲を巻き込んで成果を生み出す。女性データサイエンティストのしなやかな仕事ぶりを肌で感じられる40分の座談会だった。