2014年に国内で開発された手のひらサイズのボード型コンピューター。先行する「Raspberry Pi」以上にシンプルで安価なことから、子ども向けのプログラミング入門キットとしてじわじわと広がりつつある。

 「IchigoJam」はボード型のコンピューター。2014年にjig.jpの福野泰介社長が開発した。ガラケー用のWebブラウザーやTwitterアプリで有名になった同社だが、福野氏自身が以前から熱心に子ども向けのプログラミング教育に取り組んでいたことから製品化に結び付いた。

 教育用として必要最低限の機能を持たせたボード型コンピューターとしては「Raspberry Pi(ラズベリーパイ)」が世界的に使われているが、IchigoJamはそれ以上に質素なスペックだ。LAN端子や音声出力機能はなく、映像もテキスト出力のみ。CPUの周波数は48MHzと非常に低く、メモリーもわずか4KBしか搭載していない。OSの代わりに、8ビット時代のパソコンと同じように「IchigoJam BASIC」を搭載している。

 それ以外の特徴は(1)組み立てキットが1500円と安価(2)組み立てにはんだ付けなどが必要なため、モノ作りの醍醐味が味わえる(3)BASICを利用し、子どもでもプログラミングを体験できる(4)本体のほかにはテレビとキーボードを用意するだけでよい||といった点が挙げられる。電子回路のコントロールも可能で、公式サイトでは、接続したLEDを光らせる方法やミニゲームの作り方、実際に子どもたちが作ったプログラムなどが公開されている。

 福野氏は「PCN プログラミング クラブ ネットワーク」を通じてIchigoJamの普及活動をしており、出身地の福井県をベースにプログラミング教室を開催。2020年から始まる小学校のプログラミング必修化を見据えた教員向け指導にも取り組んでいる。また、福井県鯖江市のバス会社ではリアルタイム運行情報の処理基盤にIchigoJamを採用するなど、IoTデバイスとしての活用例もある。

CPUと最低限の端子しかない
CPUと最低限の端子しかない
IchigoJamのボード上には、左に映像出力、右にキーボード端子と電源用のUSB端子がある。写真は「IchigoJam T」の組み立て済みボード
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