2020年に商用提供を開始する第5世代移動通信システム(5G)の効率的運用を図り、それぞれのサービス領域に合わせて最適化したネットワークを提供する技術。仮想的にネットワークを細分化して実現する。

第5世代移動通信システム(5G)は、現行の4Gと比較して通信速度は100倍、データ転送容量は1000倍になると予測される。5Gのサービスを開始する背景には、スマートフォン(スマホ)やIoT(モノのインターネット)利用によって逼迫するデータトラフィック(通信量)の緩和、そして今後予想される自動運転やスマートホーム、遠隔医療など新サービスへの対応が挙げられる。「ネットワークスライシング」は、これら5G時代の多様な通信用途を効率的にさばくための技術として生まれた。

 ネットワークスライシングでは端末種別やサービスごとに使用領域を分割(スライス)し、それぞれの内容に最適な運用方法を当てはめていく。これは各サービスで求められる要求条件が明確に異なるからだ。例えばスマホ利用の領域では、より快適なユーザー体験のために「高速・大容量通信」が求められる。一方、IoTなどの機器類は「多端末接続・小容量通信」、VR/ARなどの仮想現実体験では「高速・低遅延通信」といったように、各サービスの特性は異なる。これまでは1つのネットワークに全サービスを収容していたため、運用のデコボコによる非効率性やコストのムダなどが指摘されていた。

 技術的には、SDN(ソフトウエア制御のネットワーク)スイッチや汎用サーバーなどの物理的な設備を共用し、複数ネットワークを仮想的に構築する。2016年6月、NTTドコモはスウェーデンのエリクソンと共同で行ったネットワークスライシングの実証実験に成功したと発表。同社ではさらなる5Gサービスの効率化に向けて検討を重ねている。

端末やサービスごとに最適なネットワークを提供
端末やサービスごとに最適なネットワークを提供
NTTドコモの公開資料を基に作成
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