動画教材などを用いて自宅で予習し、その学習成果を基に学校で児童・生徒や学生が対話や議論、実験などによる応用型の授業を受けてより深い学びを得る学習方法のこと。ICT環境の整備に伴い、導入が進みつつある。

 教室で講義を聞き、受講内容の理解を深めるために自宅で宿題を解く――。「反転学習」(反転授業)とはこの学習スタイルを文字通り“反転”したもので、自宅で動画教材などによって講義内容を予習し、教室では講義を応用した問題を協働して解いたり、議論したり、実験したりして、より深い学びを得る学習スタイルのことである。

 反転学習は2000年代後半から米国の教育現場で導入が進んだ。契機の一つは、インターネットの普及に伴う動画教材のオープン化である。その先駆けはサルマン・カーン氏が主宰する非営利の教育動画サイト「カーンアカデミー」とされ、同サイトでは初等教育から高等教育までの多種多様なレベルの講義動画を無料で公開している。

 日本で注目されるようになったのはここ2、3年。タブレット導入とともに話題に上るようになった。大規模な事例としては、佐賀県武雄市の取り組みが挙げられる。同市では2014年度から2015年度にかけ、市内の全小中学校に1人1台のタブレットを配布し、「スマイル学習」と名付けた“武雄式反転授業”を推進した。武雄市のほかにも、タブレットを導入した多くの小・中・高校、大学が反転学習に取り組む例が見られる。

 児童・生徒、学生が主体的に学習に取り組む意欲が高まることに加え、教師が講義の時間を個別指導に割けたり、ICTによる学習時間の管理や学習成果の把握が容易だったりといった利点がある。一方でタブレット購入費用や無線LAN環境整備など、各家庭の負担をどうするかといった課題がある。さらに教師自身も意識を切り替え、応用型の授業をスムーズに進行しなければならない。

 反転学習が児童・生徒や学生の学習成果向上に確実につながるかどうかはまだ検証途上にある。しかし、能動的学習手法のアクティブ・ラーニングとの相乗効果も見込まれることから、今後の学校教育の主流になるとの見方もある。

自発的な学習への取り組み、能動的な授業への参加によって学習効果の高まりが期待される
自発的な学習への取り組み、能動的な授業への参加によって学習効果の高まりが期待される
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