端末からの操作によって携帯回線の加入者情報(プロファイル)をネットワーク経由で書き込めるSIMカード、およびその仕組みのこと。遠隔で複数回線をまとめて管理でき、法人で端末を一括導入する場合などに便利。

 スマートフォンに限らず、タブレットやスマートウォッチ、ノートパソコンなど、通信用にモバイル回線を使う機器が増えている。モバイル回線の利用に必要な電話番号や契約内容などの加入者情報(プロファイル)はSIMカードに記録されており、契約内容や通信事業者を変更する際にはSIMカードを入れ替えてプロファイルを切り替える必要があった。

 これに対してeSIM(Embedded Subscriber Identity Module、組み込み用SIM)は、端末に内蔵したSIMカードの内容を遠隔で書き換えられる。そのためSIMカードを抜き挿しせずに、モバイル回線のプロファイルを変更できる。

 NTTドコモは、2014年に「docomo M2Mプラットフォーム」を発表し、自動車や建設機械などのM2M機器(互いに直接通信し合う機器)向けにeSIMを提供してきた。製造時にeSIMを組み込むことで、輸出先で現地通信事業者の電話番号を書き込んで利用できる。こうした世界中に輸出して利用される機器では、単一のeSIMを使ってM2M機器の製造や在庫を管理できるため、生産および管理の効率を向上できる。

 さらにNTTドコモは2017年2月、タブレットやウエアラブル端末などのコンシューマー機器を対象にeSIMを提供する「eSIM プラットフォーム」を発表した。法人がモバイル通信対応の端末を一括導入する場合などに、回線をまとめて制御・管理可能で、利便性が高まる。

 また、eSIM対応端末では、店舗側にSIMの内容を書き込むための専用機器が不要となる。そのためこうした専用機器を設置しない小規模な店舗や、イベント会場での仮設店舗のような場所でモバイル回線の契約、開設業務を行うこともできるようになるという。

eSIM対応機器では、SIMを交換せずに契約情報を遠隔で書き換えるだけで、回線を利用できるようになる。SIMスロットをなくしてデザインや機能の自由度を高めたり、海外で現地の通信事業者の回線に手軽に切り替えたりできる(図はNTTドコモの発表資料を基に作成)
eSIM対応機器では、SIMを交換せずに契約情報を遠隔で書き換えるだけで、回線を利用できるようになる。SIMスロットをなくしてデザインや機能の自由度を高めたり、海外で現地の通信事業者の回線に手軽に切り替えたりできる(図はNTTドコモの発表資料を基に作成)
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