社員のタレント(才能・資質)を的確に把握して企業経営に生かす管理方法。一人ひとりのキャリアを見極め、適材適所の人材配置や育成を通して戦略的成長につなげる。近年はそのためのITツールも登場している。

 タレントマネジメントとは社員のタレント(才能・資質)を把握し、適性に見合った人材育成、配置、教育、採用などを通して戦略的かつ統合的に企業経営に反映する人事の仕組みのこと。もともと米国で発展した概念であり、近年は日本でも注目されている。

 背景にはグローバル化によるマクロな視点の必要性、労働力人口の減少など、企業を取り巻く状況の変化がある。現在はビジネスモデルの行き詰まりにより、大胆な方向転換や新規事業の創出、成長分野への集中投資などを迫られる企業も少なくない。このように変化が求められる時代には、適材適所への登用で社員のパフォーマンス向上を図り、長期的な戦略ビジョンに従って次世代リーダーや優れた人材を養成することが生き残りの鍵を握る。

 これまで日本企業は所属部署の管理者による適性評価を基に、人材配置・転換をしてきたが、タレントマネジメントでは組織を横断して経営層も含めた形で人材情報を一元管理する。この人材データベースを活用することで、例えば「社員Aがどの分野に精通して最大限の能力を発揮できるのか、新規事業で活躍するにはどんな教育が必要か」といった判断を速やかに下せる。

 最近ではタレントマネジメントをサポートするITツールも登場している。クラウドを利用したデータベースや能力などの可視化ソフトが多い。社員の顔写真を並べ、どういった人材が社内にいるかを直感的に把握できる「カオナビ」(カオナビ)はサイバーエージェントや日清食品ホールディングスなど大手企業に採用されている。世界に目を向ければ、米コーナーストーンオンデマンドは日本を含む世界19カ国でタレントマネジメントのクラウドサービスを展開しており、グローバル企業での活用が広がっている。

顔写真で人材を把握
顔写真で人材を把握
カオナビでは社員の写真にキャリア情報などをひも付けて人材を管理する
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