インターネット・サービス・プロバイダー(ISP)や政府に対して、アプリケーションやコンテンツ、サービスにかかわらずネットワークを流れるトラフィックを平等に扱うことを求める考え方。

 音楽配信やファイル共有、動画配信など、大量のデータをやり取りするサービスが人気を集めるたびに、こうしたサービスが通信事業者の整備するインフラにタダ乗りしているのではないかという議論が起こる。その一方で、オープンに情報をやり取りすることを目的に発展してきたインターネットの成り立ちを背景として、通信事業者が特定のサービスの速度を制御したり利用できなくしたりすることに対するユーザーの抵抗も根強い。

 2017年12月、米連邦通信委員会(FCC)はオバマ政権時代に成立した「ネットワーク中立性」規制を撤廃する方針を決定した。この結果、例えば「追加料金を支払ったユーザーにだけ動画コンテンツを高速に送信する」といった運用がプロバイダーに認められるようになる。FCCでは今回の規制撤廃の狙いとして「回線事業者のコスト負担を軽減することで、消費者への利益の還元が期待できる」と説明している。

 米国と異なり、日本では固定ブロードバンド回線の設備事業者とISPが別事業者である場合が多く、ISP事業者間のサービス競争がユーザーの利益を損なうことをある程度防止できている。そのため米国のような規制はなく、帯域制御についてISP事業者の自主規制があるだけだ。

 一方で携帯回線のデータ通信については、LINEやYouTubeなど特定のサービスで利用した通信をデータ通信容量として含まない、いわゆる「カウントフリー」や「ゼロ・レーティング」と呼ばれるサービスが国内でも登場している。カウントフリーについては、対象サービスを携帯電話事業者が意図的に選ぶことでサービス間の競争が起こりにくくなり、今後登場する新しいサービスの普及を妨げるとして規制の対象としている国もある。今後5Gサービスなど高速のモバイル通信サービスの登場で、ブロードバンドの主役が固定回線からモバイル回線に切り替わるに従って、国内でもネット中立性についての議論が熱を帯びそうだ。

「『続きを楽しむには接続プランをアップグレードしてください』大手事業者によるこのようなコンテンツの検閲を阻止しよう」と呼びかけるバナー。ネット中立性の規制撤廃に反対するサイト「www.battleforthenet.com」が配布している
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