部下の仕事とプライベートの調和(ワークライフバランス)に配慮しながら、自らも双方を充実させる現代版の上司像。政府の「働き方改革」と呼応し、数多くの企業・自治体がコンセプトに賛同している。

 イクボスとは、部下の仕事と私生活の調和(ワークライフバランス)をケアしながら、自らも双方を充実させる上司を指す。上司が率先して働きやすい職場づくりに貢献することで、生産性向上や労働の効率化を図るのが目的だ。こうした目的を実現するツールとして今やITが不可欠であり、またIT業界においてもワークスタイル変革の観点から、イクボスという言葉が聞かれるようになってきた。

 発祥は2013年2月に群馬県庁が開催した「イクボス養成塾」とされ、同年6月には当時の森まさこ内閣府特命担当大臣が「育ボス運動に取り組む」ことを発表した。もともとは育児世代に対する配慮を想定していたが、政府による「働き方改革」の流れに合わせて解釈が拡大。企業のみならず、公的機関や自治体を巻き込むうねりとなっている。

 民間の立場からは、NPO法人のファザーリング・ジャパンが運営する「イクボスプロジェクト」が啓蒙活動を行う。イクボスを定義する独自の「イクボス10ヶ条」を設けるほか、イクボスを実践する担当者のインタビュー、セミナーの開催などを積極的に手掛ける。2014年には同NPOの呼びかけにより、11社が賛同して「イクボス企業同盟」が発足。2016年9月現在、加盟企業は100社を超え、その動きは中小企業にも波及している。

 一方で部下のやりがいをサポートすることも重要となる。例えば育児中の時短社員に対して、周囲の理解を促しつつ、短時間でも意義ある役割を担ってもらい、仕事へのモチベーションを維持してもらう、といったことだ。イクボスは変化する時代や次世代のワークスタイルに柔軟に対応する上司像でもあるのだ。

●広がるイクボス企業同盟の輪
●広がるイクボス企業同盟の輪
加盟企業が相互に取り組みのノウハウを共有し、勉強会なども開催する(出典:イクボスプロジェクトのWebサイト)
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