インターネットを通じたサイバー攻撃から、企業ネットワークやシステムを守る専門家。悪意のあるハッカーとは区別される。2020年の東京開催のオリンピックに向け、人材育成が急務になっている。

 「ハッカー」と聞くと、サイバー攻撃を仕掛ける犯罪者を連想するかもしれません。けれども、攻撃するだけがハッカーではありません。もともとハッカーとは、コンピュータやネットワークの高度な知識を持ち、それらを駆使して様々な課題を解決する人物を指します。つまり、ITの専門技術を攻撃ではなく防御に使う人々もいて、そのようなハッカーを「ホワイトハッカー」と呼びます。

背景:五輪の開催で脅威が高まる

 ホワイトハッカーは、サイバー攻撃が身近な脅威となったことで注目を集めるようになりました。ウェブサイトのダウンやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の停止、ホームページの改ざん、コンピュータウイルスによる機密情報の持ち出し。これらの大半はハッカーによるサイバー攻撃が原因です。

 インターネットが重要な社会インフラとなった今、自社のネットワークやシステムはいつ攻撃を受けてもおかしくない状況です。サイバー攻撃を受けても業務やサービスの提供を継続できるよう、企業のネットワークやシステムを守る手立てを打つのがホワイトハッカーの役割です。

 サイバー攻撃の対象は、ATM(現金自動預け払い機)や株式の自動売買、列車の運行管理、電力の発電設備といった社会インフラにまで広がっています。また全世界が注目するイベントの開催国が標的となりやすく、日本はオリンピックが開催される2020年に、国内の多くの企業や社会インフラでサイバー攻撃を受ける可能性が指摘されています。

 こうした状況を踏まえ、日本経済団体連合会は2月17日、「サイバーセキュリティ対策の強化に向けた提言」を発表しました。取り組みの1つとして、ホワイトハッカーをはじめとした高度なセキュリティー人材の育成が急務だと提言しています。