物事が起こる確率や関連付けを扱う統計学を応用した分析手法。原因の見極めや将来起こる出来事の予測ができるので、ビジネスでの意思決定の支援に役立つと注目が集まっている。


 「顧客の行動を予測したいが、どうしたらよいか」。企業のマーケティング担当者が抱きがちなこんな悩みに有効なのが「ベイズ統計学」を応用したベイズ分析と呼ばれる手法です。18世紀のイギリスの数学者、トーマス・ベイズが考案した「ベイズの定理」を基にしています。

原理:確率と関連性で分析

 ベイズ統計学の特徴は、集めたデータに物事が起こる確率とデータ同士の関連性を加味して分析することです。広く使われる統計学は、集めたデータそのものを分析しますが、ベイズ統計学は違います。「コンピュータの処理能力の高まりで、計算に時間のかかるベイズ統計をビジネスの現場でも使いこなせるようになった」。ベイズ統計学に詳しいNTTデータ数理システムの石田和宏主任研究員はこう指摘します。

 ベイズ分析を実践すると、「きっとこうに違いない」といった思い込みを排除しやすくなります。例えば、「0.01%の確率(1万人に1人の確率)で感染する細菌がある」とします。そして、「この細菌に感染しているかどうかを調べる検査の精度は95%」だったとします。ある人が検査を受けたところ陽性反応が出ました。「検査の精度は95%と高い。陽性なので、残念ながら細菌に感染した」と落胆することしょう。ですがベイズの定理を使って分析すると、「感染の可能性は極めて低い」と受ける印象は違うものになります。