ロシアで開発された課題解決手法。250万件以上の特許情報を基に、問題解決の「定石」をまとめた。データ分析により課題解決策を導くデータサイエンティストからの関心も高まりつつある。


 データを分析したり、問題を解決したりしようとするとき、いつも同じようなアプローチになり、改善の域を出ない成果しか出せない。柔軟な発想で創造的な成果を上げたいのだが――。

 こんな悩みに応える手法の1つが、ロシアで開発された問題解決手法の「TRIZ(トゥリーズ)」です。世界中の250万件以上の特許情報を基盤に、創造的な成果を導く手法や定石を整理したものです。1990年代に製造業の開発部門で採用が進みましたが、データ分析の分野でも、最近再び注目を浴びています。

成果:目標設定にも有効

 TRIZが定義する定石の1つに「S字曲線」があります。技術の初期段階から成熟する前までの過程をステージに分解したもので、35種類のパターンがあります。

 目標を設定する際に、このS字曲線を参考にします。例えば「固体→粒体→粉体→ゲル→液体→気体→プラズマ→場→真空」と進化するパターンがあります。これを洗剤に当てはめてみた場合、固形から粒体、粉体、液体へと進化してきたことと一致します。すると将来の形として、真空、つまり水を使わないで洗濯するといったアイデアにつながります。従来の発想の延長線上ではない、斬新な目標が生まれます。

 定石には、発明原理を40パターンに分類し、「分割する」「逆にする」「繰り返す」といった抽象的な言葉にまとめたものもあります。「果樹園のオレンジが、ヒヒに食い荒らされないようにするためにどうするか」といったシンプルな事例から、定石の使い方を学んでいきます。