総務省が2016年から割り当てを予定している、IoT(モノのインターネット)機器向けの電話番号。機器間通信専用と位置付け、将来のIoT機器の増加を見越して最大13ケタと長めの番号にする。

 総務省は2016年にも、020で始まる新たな電話番号の割り当てを始める方針です。2015年10月16日に開催した情報通信審議会の専門委員会で方針が示されました。

 これまで020は「無線呼び出し」用番号として使われていました。「ポケットベル」などの名称で1990年代に大流行した無線呼び出しですが、2015年9月末時点の契約数は14万3500件まで減少。割り当て済みの020番号も、利用可能な9000万件のうち120万件にとどまります。これを新たに、自動販売機に埋め込む通信モジュールなどのIoT機器に割り当てて活用する主旨です。

背景:携帯電話番号が「枯渇」

 IoT機器の通信モジュールは現在、携帯電話のパケット通信機能を使うため、電話番号も携帯電話と同じ090や080を使ってきました。

 ところが近年、携帯電話番号の不足が深刻な問題になってきました。既に090や080は合計で1億8000万件の番号を通信各社に全て割り当て済み。2013年11月からは、PHS専用だった070を携帯電話にも割り当てていますが、これも既に半数を超える4580万件は割り当て済みです。現状のペースでは、2018年にも番号が枯渇する見通しです。

 日本の総人口の2倍を超える数の番号が急速に消費されているのは、IoT機器が通信モジュールを介してサーバーと遠隔で通信する機器間通信(M2M=マシン・トゥ・マシン)の用途が広がっているためです。

 総務省は070の枯渇後に備えて、060、040、030、さらには0900、0700などの番号も用意しています。それでもIoTの普及ペースが一層加速すれば、これらの番号も早晩枯渇しかねません。

 枯渇対策には電話番号を1ケタ増やす「ケタ増し」もあり得ます。実際、携帯電話は1999年にそれまでの10ケタから11ケタに増やされました。しかしケタ増し時は間違い電話を防ぐための周知に膨大な手間がかかるうえ、IoT機器の場合はソフトや設定の改修の手間も必要です。

 そこで人が使う番号とIoT機器専用の番号をあらかじめ分けることにしました。当面は携帯電話と同じ11ケタを割り当てますが、ある程度割り当てが進んだら、12~13ケタと長い番号も発行する方針です。

効果:IoT機器の普及に拍車

 020の割り当て開始で、IoTへの認知が広がり、IoT機器の普及のペースが速まることが期待できます。IoTは自販機の在庫管理のほか、電気や水道などの自動検針、自動車のテレマティクスサービス、子供や高齢者、ペットや農作物、建物などの見守りや防犯、デジタルサイネージの情報更新、クレジットカードや電子マネーの決済など幅広い用途が期待されています。

 IoTの通信インフラには無線LANやブルートゥースなども使えますが、通信各社が全国に敷設済みのLTE回線が使えれば、簡単に導入できます。ネックだった電話番号の枯渇問題にメドが立ち、普及に弾みがつきそうです。