現場の社員が自らデータを分析し、リポートを作成すること。現場でのデータ活用を支援するため、BI(ビジネスインテリジェンス)ツールの新たな利用形態として注目を集めている。

 今や業種・業態を問わず、様々な企業で社内外のデータを経営や業務に生かす取り組みが始まっています。こうした企業で導入されつつあるデータ分析ツールがセルフサービスBIと呼ばれる機能を持つものです。タブロージャパン「Tableau」、日本マイクロソフト「Power BI」、クリックテック・ジャパン「Qlik Sense」などがあります。

背景:エクセルの手間を解消

 BIツールは10年以上前からありました。ただしこれまでのBIツールは膨大なデータを処理できる高性能なサーバーが必要で、IT部門が主体となって運用しています。IT部門が業務部門の社員の要望をヒアリングしたうえで、分析対象となるデータを整備したり、参照用の画面を設計したりします。新たなデータ項目を追加したいときや別のデータを分析対象に加えたいときは、業務部門の社員がIT部門に依頼して対応してもらう必要がありました。

 これまでのBIツールは、特定のデータを事前に決めたフォーマットに従って出力する用途に向いていました。一方で今、多くの企業が取り組むデータ活用はその時々で必要なデータを読み込み、様々なグラフを作成してデータの特徴や関係性を見いだそうとすることです。

 そこで業務部門で利用され始めたのが、日本マイクロソフトの「エクセル」といった表計算ソフトでした。ところが表計算ソフトでグラフを作成するには、対象となるデータの表を先に作っておく必要があります。そのことが、試行錯誤を繰り返す分析作業の手間となったのです。

 例えば、いったん作成したグラフで項目を変更するような場合は、グラフの基になる表を修正しないと、グラフに反映されません。こうした表計算ソフトの弱点を補うように登場したのが、セルフサービスBIのツールです。

 グラフを自動作成できることが特徴で、利用者はデータ分析に集中できます。「データビジュアライゼーションBI」「データディスカバリーBI」などとも呼ばれています。

 セルフサービスBIツールの操作画面では、読み込んだデータ項目がリスト形式で表示されます。このリストからグラフにしたい項目を選択し、「列」と「行」のどちらかに指定すると、グラフが自動的に作成される仕組みです。円や棒、折れ線といったグラフの表示形式は、選択された項目のデータ特性に応じて最適なものが自動で選択されます。

特徴:試行錯誤の繰り返しが楽に

 実際の分析作業では、いったん作成したグラフの項目を入れ替えたり、表示するデータを絞り込んだりと、試行錯誤の繰り返しです。こうした面倒な作業も、簡単な操作で進められます。

 項目の入れ替えは、選択中の項目を解除して新たな項目をリストから選び直すだけで済みます。データの絞り込みは、使いたい項目だけをリストから選び、範囲や要・不要を指定するだけで、即座にグラフに反映されます。