社員数が50人以上の企業に対し、年1回のストレスチェックの実施を義務化した法案。職場環境に起因したストレス状況を把握し、環境改善につなげる狙いがある。


 ストレスチェック義務化法案とは、「労働安全衛生法」(安衛法)の一部を改正した法案のことです。2014年3月13日に国会に提出され、同6月19日に可決されました。6月25日には「改正労働安全衛生法」として公布されており、2015年12月までに施行の予定です。改正安衛法が施行されると、社員数50人以上の企業では年1回のストレスチェックの実施が義務付けられます。

 安衛法は、職場で働く社員の安全と健康の確保を目的とした法律で、企業が対処すべき労働災害の防止策や責任体制の在り方などを定めています。これまでは、主にフィジカル(身体)面での健康管理を中心に規定しており、企業に定期健康診断の実施などを義務付けています。

手法:アンケートで状況を把握

 そして今回公布された改正安衛法では、メンタル(精神)面が対象になりました。企業には、社員がストレスを感じているかを把握し、必要に応じて職場環境を改善していくことが義務付けられます。

 ストレスの実態を把握するため、企業は社員に対して紙やウェブなどのアンケートを実施します。アンケートの結果は、社員にだけ伝えられます。結果を受け取った社員は、自身がストレスを抱えていて、それが職場環境に起因していると判断したら、ストレスチェックを実施した部門担当者を通じて、専門医との面談を申し出ることができます。

 この申し出は社員の任意です。企業側では、申し出があった時点で初めて、ストレスの実態を把握できるわけです。企業側の部門担当者は、申し出があった社員と専門医との面談をセッティングします。

 面談した専門医は、社員へのカウンセリングを実施すると同時に、診断内容を企業側の担当者にも報告し、ストレスの解消に必要な対処方法を話し合います。企業側の担当者は、専門医との話し合いを踏まえて「時間外労働の制限」「作業の転換」といった職場環境の改善策を実施します。

 ストレスチェックを実施するには、アンケート結果が企業側に漏れないようにする、企業側は上司に伏せながら専門医の面談をセッティングするなど、同じ安衛法で義務付けられている定期健康診断とは異なるノウハウが必要になってきます。