膨大なデータから、特徴となるパターンをとらえて自動的に識別するプログラミング技術。ネット企業を中心に、画像や音声の認識精度を高める技術として注目を集める。


 アップルやフェイスブック、グーグルといった米国シリコンバレーを拠点とするネット企業で、ある分野に精通した人材の争奪戦が起きています。それはディープラーニングと呼ばれる領域です。人間のような学習能力をコンピュータに持たせる、機械学習における人工知能技術の1つです。

動向:米ネット企業が注目

 ネット企業は今、ディープラーニングの技術を強く求めています。シリコンバレーにあるNECラボラトリーズアメリカで機械学習を研究する藤巻遼平リサーチャーは「ディープラーニングの専門家が大手ネット企業に請われて転職するケースが目立ってきた」と内情を明かします。

 狙いは自社サービスの向上です。フェイスブックは画像の顔認識で、アップルやグーグルはスマートフォン利用者の音声認識で、それぞれ精度の向上を目指しています。

 フェイスブックは2014年3月、新しい顔認識ソフト「DeepFace」を発表しました。約4000人の400万画像を基に自動認識アルゴリズムを組み込んで、異なる2つの人物画像をコンピュータに見せ、同一人物かを識別させるテストを実施しました。その結果、一般の人の画像で同じかどうかを識別できた割合は、人間と同じレベルの97%だったとしています。

 ディープラーニングでは画像などの膨大なデータを取り込んで、そこから人や人の動き、自動車といったモノなどを識別できるようにします。そこで用いられるのが、人間の脳の神経回路を模した「ニューラルネットワーク」です。例えばある画像データを入力して「人が歩いている」と出力させる場合、「この画像データを入力したら、“人が歩いている”と出力する」といった具合に入力と出力を関連付けるのです。

 こうしてあらゆる入力に対して、適切な出力ができるようにします。そのために、出力までに何層にも及ぶ“深い”ニューラルネットワークをコンピュータ自身が学習を通して自動生成します。ディープラーニングの名の由来はここから来ています。