IEEE 802.11n(以下、11n)から利用できるようになった、無線LANの通信速度を高速化する技術。「マルチチャネル」と呼ぶこともある。

 無線LANは、通信に利用できる周波数帯を「チャネル」という単位で区切って使う。無線LANアクセスポイントはそれぞれ異なるチャネルを使用して、電波干渉による速度低下を避ける。このチャネルを複数まとめて使って、一度に送受信するデータ量を増やすのがチャネルボンディングである。

 11nまでは束ねられるチャネル数は2だったが、IEEE 802.11ac(以下、11ac)では、4、8、16といった数を束ねられるようになった。チャネルごとの帯域幅は、11nや11acでは20MHzである。チャネルボンディングによって2つのチャネルを束ねると、40MHzになる()。4つなら80MHz、8つなら160MHzだ。

図●5GHz帯におけるチャネルボンディング使用時のチャネル数
図●5GHz帯におけるチャネルボンディング使用時のチャネル数
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 通信速度は、帯域幅が広いほど向上する。2つのチャネルを使うと、単純に計算で約2倍の速度が期待できる。1つのチャネルで通信した場合の理論上の最高速度が72Mビット/秒なら、144Mビット/秒になる。

 ただしチャネルボンディングを使うと、その空間で使用できるチャネルの数が減る。5GHz帯で使用できるチャネル数は19である。40MHzのチャネルボンディングで通信すると、通信に利用できる経路(図では実質的な意味からチャネルと表現した)の数はおおよそ半分の9となる。80MHzなら4、160GHzなら2だ。

 このため、多数の端末が無線LANで通信をする環境でチャネルボンディングを多用すると、通信しにくくなる恐れがある。企業のオフィスやイベント会場など、スペース当たりの端末数が多い場合は、多用しないほうがよい。