デジタル変調とは、情報をデジタル信号に載せて伝送するために必要な処理を指す。処理にあたっては、データを表す0と1のデジタル信号に加えて、「搬送波」という高い周波数の波を用意する。デジタル信号のオン・オフに合わせて搬送波を変化させて、データを表現する。

 変調の方法は主に3種類ある。波の高さ(振幅)を変化させる「振幅変調」、周波数を変化させる「周波数変調」、位相を変化させる「位相変調」――である。スマートフォンなどの無線通信機器では、主に位相変調(PSK)や、位相変調と振幅変調(ASK)を組み合わせた「直交振幅変調」(QAM)が使われる。

 PSKを用いた変調で最も単純なものは、BPSKだ()。デジタル信号の0と1に対して搬送波の位相をそれぞれ「0度」と「180度」とし、1回の変調で作れる信号波形(シンボル)に対して1ビットの情報を割り当てる。

図●BPSKによるデジタル変調
図●BPSKによるデジタル変調
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 データ伝送の速度を上げるには、シンボル1つあたりの情報量を増やす。1つのシンボルに多くのビットを割り当てて、1回の変調で多くの値を表現できるようにするのである。1つのシンボルで多くの値を表現できる変調方式を「多値変調」と呼ぶ。

 多値変調で単純なものは「QPSK」だ。QPSKでは、1つのシンボルに4種類の状態を設けて2ビットの情報を割り当てる。また、現在主流の携帯電話方式であるLTEでは、QPSKに加えて、16種類の状態を使って4ビットの情報を割り当てる「16QAM」や、64種類の状態を使って6ビットの情報を割り当てる「64QAM」という変調方式を使う。

 QPSKは運べるビット数は少ないが、ノイズに強い特性がある。一方、64QAMは多くのビット数を運べるが、ノイズには弱い特性がある。LTEでは電波環境に応じて、QPSK、16QAM、64QAMの3種類を使い分けている。