使い勝手を高めるため、顧客管理システムは個人の属性情報などを柔軟に管理できるよう新規開発した。全業務アプリの顧客情報はすべてサーバー側で管理し、端末には一切データを残さない仕組みとした。端末で利用するすべての業務アプリはモバイル回線を介して自社運用するプライベートクラウド環境の上で動作する。

 個人情報をサーバーで管理する仕組みは、2015年1月から利用を開始する新しい契約申し込みアプリも同じだ。顧客が記入した後で、住所など記入した個人データや署名の筆跡データはサーバーに転送され端末には残らない。

アプリの段階導入でトラブルを収束

 システム調達は2013年後半から本格化した。コンペで選定したベンダーは、画面ツールや保険料計算、データベース構築など、サブシステムや機能ごとにばらけた。専門分野での強みを重視した結果だった。

 しかし、年が明けて開発トラブルが表面化する。システム結合テストで不具合が発生するなど、開発が遅延し始めた。泊口氏らシステム構築のメンバーは遅れの取り戻しに力を注ぐが、導入を急ぐリスクも見えてきた。2014年1月には計画の一部見直しを決めた。端末の導入時期は当初計画通り2014年10月に据え置き、一部業務アプリの導入時期を後ろにずらした。

 当時は苦渋の決断だったが、「業務アプリを段階的に導入する判断は結果的に正しかった」と泊口氏は振り返る。営業職にとってはまず顧客データの登録やライフプランの活用に慣れるなど、段階的にタブレット活用を広げる余裕が生まれたからだ。

 遅れは生じたが、ペーパーレス化を実現する新しい契約手続きアプリなどの開発は順調に進んでいるという。

●プロフィール

本社所在地:東京都港区
従業員数:1万247人(2014年3月時点)
事業内容:国内生命保険大手の一角を占める。全国に60支社、447の営業拠点を持ち、6800人あまりの営業職員が在籍する。