爆発的に増え続けるデータの活用が、日本成長の最大のカギ──。最先端のDB/情報処理技術を牽引する国立情報学研究所の喜連川所長は日本のものづくりの革新や、医療・教育などの課題解決に向け、国を挙げたビッグデータ/人工知能技術の活用促進を訴える。

(聞き手は吉田 琢也=日経コンピュータ 編集長)

ビッグデータ技術の実用性が高まり、機械学習をはじめ人工知能への取り組みが再び脚光を浴びるようになりました。

喜連川 優(きつれがわ・まさる)氏<br>1983年、東京大学大学院 工学系研究科情報 工学専攻博士課程修了 工学博士。2003年、東京大学 生産技術研究所 戦略情報融合国 際研究センター センター長。10年3月から14年3月まで、内閣府の最先端研究開発支援プログラム(FIRST)において、超高速データベースエンジン開発プロジェクトの代表を務める。13年4月に国立情報学研究所所長、同6月に情報処理学会会長。1955年生まれの59歳。(写真:村田 和聡)
喜連川 優(きつれがわ・まさる)氏
1983年、東京大学大学院 工学系研究科情報 工学専攻博士課程修了 工学博士。2003年、東京大学 生産技術研究所 戦略情報融合国 際研究センター センター長。10年3月から14年3月まで、内閣府の最先端研究開発支援プログラム(FIRST)において、超高速データベースエンジン開発プロジェクトの代表を務める。13年4月に国立情報学研究所所長、同6月に情報処理学会会長。1955年生まれの59歳。(写真:村田 和聡)

 “情報爆発”に伴う技術進化が人工知能を新たなステージに引き上げたことは間違いないと思います。

 人工知能がこれだけ注目を集めるようになった最大のきっかけは、何といっても米IBMの質問応答システム「Watson(ワトソン)」です。2011年に米国のクイズ番組で人間のクイズ王に勝利したことで、一気に広く認知されるようになりました。

 Watsonの開発者から話を伺って非常に驚いたことがあります。IBMは創業100周年(2011年)をターゲットにWatsonの開発を進めましたが、ソーシャルメディア上で飛び交う情報から得られる知識の総量が、2011年頃には使いものになるレベルに達すると予測した上で、ああいうことをやったというのです。これは本当にすごい。時代の流れをつかんだ、心の底からほめ称えるべき仕事だと思います。