ロボット開発ベンチャーのRT.ワークスは7月14日、電動補助カート「ロボットアシストウォーカーRT.1」を発売する。高齢者が歩行時に使う四輪カートに複数のセンサーを搭載し、坂道などで転ばないよう支援する。

 RT.ワークスを起業した河野誠社長は、ソニーや船井電機で経験を積んだエンジニアだ。高齢者向けロボット市場に参入した狙いを聞いた。

(聞き手は小笠原啓)

河野 誠(こうの・せい)氏
河野 誠(こうの・せい)氏
1955年東京都生まれ。電気通信大学電気通信学部を卒業し、1980年ソニー入社。コンピュータや通信関連の商品開発などを手掛け、2004年に船井電機に転職。2014年6月にRT.ワークスを創業し代表取締役に就任。

7月14日から「ロボットアシストウォーカーRT.1」を販売します。まずは製品のコンセプトと、開発した狙いから教えて下さい。

河野:「転ばぬ先の杖」を最新の技術で実現したい。一言で言うと、これが商品のコンセプトです。

 高齢者は転んでけがをしてしまうと家に閉じこもりがちになり、社会との接点が失われかねない。そして、家に一人でいると寂しくなり、一日中テレビの前から離れられなくなる人もいます。すると、介護などの負担につながります。

 こうした状況を防ぐには、高齢者を「歩かせる」仕組みが必要です。転倒を心配せず歩ける楽しさを味わい、外に出て行くモチベーションを高めてもらいたい。自宅から近所のコンビニまで歩いて買い物するだけでも、気分転換になります。こうした観点で開発したのが、「ロボットアシストウォーカーRT.1」です。

どうして「転ばない」のでしょうか。

河野:ざっと仕組みを説明しましょう。

下り坂で自動的にブレーキ

 ロボットアシストウォーカーは、ハンドルを握って歩く四輪カート。上り坂では高齢者を引っ張るように進み、下り坂では自動でブレーキがかかります。その秘密は、本体に装着した約10種類のセンサーにあります。

 まずは車体に装着したセンサーで、路面の状況を正確に把握します。上り坂なのか下り坂なのか、左右のどちらに傾いているのかが、車体の傾きから判断できます。これに、ハンドル部分のセンサーから得た情報を組み合わせる。片手で握っているのか、右手と左手のどちらを前に出そうとしているのかといったデータですね。すると、カートの進行方向が推定できます。

 さらに、車輪の回転速度やカートに乗せた荷物の重さなどを加えると、坂道の状況ごとに「最適なアシスト力」を算出できます。リアルタイムでカートの動きを制御することで、押している高齢者が転倒するリスクを軽減できるわけです。