製造業でのIT(情報技術)活用がかまびすしい。あらゆるモノがネットでつながることで、第4次産業革命がはじまるとも言われている。ドイツが産官学を挙げて提唱している「Industrie4.0(インダストリー4.0)」が取り組みの最先端として持ち上げられる中、日本は後追いをするのか、それとも独自のIT化に進むのか。法政大学デザイン工学部システムデザイン学科の西岡靖之教授に聞いた。

(聞き手は木村 知史)

西岡先生は、長年、製造業においてのIT活用に従事されてきました。西岡先生の目には、今の日本の製造業はどのように映っていますか。

西岡 靖之(にしおか・やすゆき)氏
西岡 靖之(にしおか・やすゆき)氏
法政大学デザイン工学部システムデザイン学科教授。国内ITベンチャーに6年間勤務し、その後、東京大学大学院先端学際工学専攻にて博士(工学)を取得。1996年東京理科大学助手、2004年マサチューセッツ工科大学客員研究員。2001年に、生産スケジューリング技術の標準化団体であるPSLXコンソーシアムを設立し、仕様の一部をIEC/ISO国際標準とする。現在、日本機械学会生産システム部門長として「つながる工場」研究分科会を主査、その他、スケジューリング学会副会長、NPO法人ものづくりAPS推進機構副理事長、IEC/SC65E/JWG5国内委員会主査。

西岡:現在は、大手企業だけかもしれませんが、大分景気が良くなっているせいか、マインドはとても上向いている気がします。ただ、1980年代~90年代の、製造業にもの凄く勢いがあった頃と比較してしまうと、まだまだ内向きな感じはしますね。

 だから、私が教えている学生にしても、就職先として製造業よりも情報系の方が人気があります。恰好よく見えるんですかね。ものづくりの分野にも、ロボットなど先端的でスマートな分野があるのですが。どこか、イメージ的にも成長産業というところが伝わっていない。新しいことを自由な発想を持ってやっていこうというイメージを持ってもらうのには、なかなか難しいのかなと感じています。

 ただ、先ほども言いましたが、マインドは上向きで、例えば、メーカーの方と話しをさせていただいていても、新しいことをやりましょうという動きが、ここ1年ぐらいは出てきています。そこにはドイツがモノ作りの革新に向けてスローガンとして掲げている「Industrie4.0(インダストリー4.0)」のような外圧もあって、これじゃいかんというマインドが出始めてきています。

 このような流れにのって、日本の製造業がこれまでの殻を打ち破って、新しい形に乗り替わるぞ、といったようなメッセージを皆で共有できるような体質になれるといいと思います。

インダストリー4.0に関しては、昨年あたりからいろいろな形で報道されるようになってきたと思います。そういった意味では、ちょうど景気が戻ってきていいタイミングだったのかもしれません。

西岡:マスコミの記事などもあって、何かをやらなきゃいけないという、ある種、危機意識を持ち始めた人も多い。ただその人たちの中でも、じゃあ何をしたらいいのかよく分からないという人がほとんどなのです。

 どちらかというと、日本の製造業は、キャッチアップ型のやり方で来ました。品質をとことん極めようとか、カイゼをとことんやろうとか、そしてその先に答があったのがこれまでのやり方。ある意味ではいいことなのですが、ちょっと違ったところにポンとジャンプしようとか、新しいコンセプトや新しいITを使ってこれまでと違ったことをしましょうとかが得意ではない。新しいコンセプトや方向性とかが見えると、動き始めると思うのですけれど。