2014年4月に旧ジャパンケーブルネット(JCN)と合併し、資本や人材ともにKDDIと住友商事が折半で支える新経営体制に移行したジュピターテレコム。有料放送市場が飽和する中でどう成長シナリオを描き、NTTなどに対抗するのか。かじ取りを担う牧社長に聞いた。

(聞き手は加藤 雅浩=日経コミュニケーション編集長)

2014年4月のJCNとの合併から半年が経った。現在の統合効果に対する評価を教えてほしい。

牧 俊夫(Toshio Maki)
牧 俊夫(Toshio Maki)
1955年生まれ。日本移動通信(IDO)、DDIを経て、2004年4月にKDDI au事業本部au商品企画本部長に就くなど携帯電話やブロードバンド事業担当を歴任する。2008年4月に中部テレコミュニケーション(CTC)社長に就任。2011年4月に執行役員としてKDDIに復帰。2013年3月にジュピターテレコム副社長に就き、会長職を経て2014年1月より現職。(写真:新関 雅士)

 想定以上に効果があったのは、旧JCN系列局の地域で既設マンションからの新規契約者が増えたことだ。ケーブルを引き込んだマンションへの一括契約の営業を強化し、共益費や家賃を充てて全戸導入を提案するなどの取り組みが成果を出している。もともとジュピターテレコム(J:COM)系列局の営業地域はマンション世帯の加入率が高く、そのバルク営業のノウハウを生かせた。

 一方、以前からのJ:COM系列局の地域では効果が十分とは言えない。特にマンション向け電力小売り事業の進捗にはやや不満がある。

 当社の電力サービス「J:COM電力」は、電力会社からまとめ買いした高圧電力をマンションで一括受電し、低圧に変換して各戸に分配することで割安な料金を実現している。マンションの受電設備を丸ごと入れ替えるので全戸の居住者から合意を取る必要があり、思ったよりも時間がかかっている。

 ただし、電力の利用だけで5%の割引、テレビや通信サービスとのセットでは8%の割引にするなど魅力的な料金を実現できている。事業化のために高圧電力の一括受電モデルのノウハウを持つアイピー・パワーシステムズ(IPPS)を2013年に買収しており、注力分野であることに変わりはない。