2013年10月にフレッツ光の契約数が1000万件を突破したNTT東日本。とはいえ、かつてに比べれば純増ペースが明らかに落ちており、必ずしも余裕があるわけではない。光回線の拡販や新たな収益源の開拓などに向けた戦略を、山村社長に聞いた。

(聞き手は加藤 雅浩=日経コミュニケーション編集長)

社長に就任してから約2年が経過した。手応えはどうか。

山村 雅之(Masayuki Yamamura)
山村 雅之(Masayuki Yamamura)
1953年生まれ。東京都出身。東京工業大学大学院理工学研究科電気工学専攻修士課程修了。1978年に日本電信電話公社(現NTT)に入社。2005年6月に東日本電信電話(NTT東日本)取締役東京支店長、2008年6月に常務取締役東京支店長。2009年6月に常務取締役ネットワーク事業推進本部長。2012年6月に代表取締役社長(現職)。(写真:新関 雅士)

 社長就任後は「変革に向けた5つのチャレンジ」というキーワードを掲げて取り組んできた。5つのうち、3つはフレッツ光の利用促進に関するもので、残り2つは新たな収益源の確保とコスト削減になる。

 フレッツ光は、個人向けがいずれ先細りするのが明白。若年層を中心に“固定離れ”の傾向も見られ、光回線の魅力を改めて訴求していく。7月に始めた1Gビット/秒の接続サービスもその施策の一つになる。体験型キャラバンイベント「昭和レトロなふれあい広場」でシニア層の開拓も進めている。シニア層は文字入力が苦手なことが多いため、インターネット検索やテレビ操作を音声で指示できるスティック型端末も開発中だ。法人向けには帯域優先型サービス「プライオ」を投入したほか、携帯電話事業者のバックボーン向けも力を入れている。

 新たな収益源としては、不動産の活用が大きな柱として見えてきた。一方、中堅・中小企業向けの運用保守サービス「オフィスまるごとサポート」は伸びているものの、当初の期待ほどではなく、目標を大きく下回っている。最後の柱であるコスト削減はこれまでも継続して取り組んでおり、一定の成果が出ている。それぞれの評価はともかく、最終的に2年連続で増益を確保できた点は良かったと考えている。

中堅・中小企業向けは何が誤算だったのか。

 オフィスまるごとサポートの最大の特徴は、社内LANにつながっている機器を遠隔から詳細に監視できる点。専任の管理者がいなくても、当社がセキュリティ対策を含め、運用管理やトラブル対応などの面倒を見る。サービスの良さを伝えきれていない面はあるが、販路が決定的に弱かった。法人向けは電話関連で入り込んでいても、IT関連は十分に攻め切れていない。加えて、同市場には既に多くのプレーヤーが参入しており、システムインテグレーターやオフィス機器メーカーなどが顧客をがっちり握っている。今後は提携先のブランドでサービスを提供することも含め、販路を強化していく。