KDDI(au)のMVNO(仮想移動体通信事業者)として名乗りを上げた電力系通信事業者のケイ・オプティコム。近畿2府4県を中心にFTTHサービスを展開する同社にとって初の全国サービスでもある。格安SIM市場に挑む藤野社長に今後の戦略を聞いた。

(聞き手は加藤 雅浩=日経コミュニケーション編集長)

KDDI(au)のMVNO(仮想移動体通信事業者)として初となる格安SIMを発表した。反響はどうか。

藤野 隆雄(Takao Fujino)
藤野 隆雄(Takao Fujino)
1949年生まれ。73年3月に大阪大学大学院工学研究科通信工学専攻修士課程修了。同年4月、関西電力に入社。95年6月に研究開発室研究開発副部長。98年6月、情報通信室通信システム部長。2000年6月に副支配人IT戦略グループ チーフマネジャー。2003年6月にケイ・オプティコム取締役、関西電力支配人 経営改革・IT本部副本部長。2007年6月、ケイ・オプティコム監査役、関西電力常務取締役 経営改革・IT本部長。2009年6月にケイ・オプティコム代表取締役社長に就任。現在に至る。趣味は園芸(DIYの庭造り)。(写真:水野 浩志)

 予想以上だ。サービス発表と同時に受け付けを始めた端末セットの先行予約では先着1000人限定の優待枠を設けたが、発表翌日の午前中に埋まってしまい、早々に締め切った。その後も順調で、約2週間で(SIM単体の申し込みも含めて)約1万の予約があった。

 全国メディアが取り上げてくれたことが大きいが、なんといってもLTEというスピードの速い最新のスマホを格安の料金で使える点に反響が高かった。スピードの遅い他社のMVNOに不満を持った人が飛びついてくれたのではないだろうか。

MNO(携帯電話事業者)としてKDDIを選んだ理由を聞きたい。

 スタートはスマホが急速に立ち上がり始めた2年ほど前。当時からNTTドコモのMVNOがほとんどだったが、我々もNTTドコモとKDDIそれぞれの条件を天秤にかけて最終的にKDDIに落ち着いた。

 決め手はレイヤー2(L2)接続の料金や、端末の調達・試験が自前で可能などいくつかあるが、マーケットの大きさも判断材料の一つだった。市場自体はNTTドコモのほうが大きいが、どこもまだKDDIのMVNOで格安SIMを手掛けていないので、先行者利益があると踏んだ。

 当初は年度の変わる時に発表するつもりで準備していたが、端末を万全の状態にしてからリリースするために、社内やKDDIとの試験を入念に実施したので少し遅れた。ただ予約状況を見ていると、結果として良いタイミングになった。