レンタルサーバー事業やデータセンター事業の老舗であるさくらインターネット。ここに来てIoT(Internet of Things)や人工知能(AI)の分野への取り組みを加速している。同社の狙い、ビジネスの現状について田中社長に聞いた。

2016年度中にIoT基盤サービス「さくらのIoT Platform」を提供すると発表した。IoTビジネスに対する期待を教えてほしい。

田中 邦裕 Kunihiro Tanaka
田中 邦裕 Kunihiro Tanaka
1978 年生まれ。大阪府出身。1996 年、国立 舞鶴高等専門学校在学中にさくらインターネットを創業し、レンタルサーバー事業を開始。舞鶴高専卒業後の1998年、インフォレスト設立。1999年、さくらインターネットを設立、代表取 締役社長に就任。その後、最高執行責任者などを歴任し、2008年から現職。

 当社のビジネスのキーワードは「コンピューティング」。ネットワーク(通信)、ストレージ(蓄積)、プロセッサー(処理)をコンピューティングとして定義しており、コンピューティングが増えるほど課金できるビジネス構造だ。

 これからはリアルな世界とコンピューティングの世界をつなぐところ、さらにコンピューティングの中身に商機がある。リアルな世界からコンピューティングの世界の入り口となるスマートフォンはもちろん、モノのインターネットであるIoTも当社のビジネスを広げられる。

 IoTは単価が安い。ただ何千万、何億という単位のモノが対象となる。数十万個の規模のレンタルサーバー市場と比べると、桁が1桁2桁違う。単価が1桁小さな売り上げであっても、2桁大きなボリュームを扱えれば大きなビジネスになる。

さくらのIoT Platformのα版を4月から配布開始した。反響は。

 さくらのIoT Platformは、通信モジュールに加えて、我々がMVNO(仮想移動体通信事業者)としてソフトバンク、ソラコムとL2(レイヤー2)接続した閉域網を用意し、通信、蓄積、処理のコンピューティング環境を一体型で提供する。約200社にα版を配布したが、簡単に利用できることが評価されている。料金も少しずつ明かしているが、安いという評価だ。

 現状ではIoT向け通信費が安くなったとはいえ、月300~500円、年間で3600円はかかる。何十万円、何百万円といった製品には通信機能が入っても、何千円、何万円といったデバイスに入れていくことは難しい。

 我々はIoT向け通信を月数十円単位に下げていく。もしくは通信モジュールを購入したら、2年分の通信費があらかじめ含まれているようなモデルに変えたい。