2017年1月13日にMVNO(仮想移動体通信事業者)サービス「mineo」(マイネオ)の契約数が50万を突破したケイ・オプティコム。市場シェアも4位に急上昇し、直営店の展開やテレビコマーシャルの投入などによる注目度も高まっている。勢いに乗る同社の藤野社長に今後の戦略を聞いた。

MVNO(仮想移動体通信事業者)サービス「mineo」(マイネオ)の加入件数が1月13日に50万を突破した。約1年で30万程度を獲得したことになる。

藤野 隆雄 Takao Fujino
藤野 隆雄 Takao Fujino
1949年生まれ。1973年3月、大阪大学大学院工学研究科通信工学専攻修士課程修了。同年4月、関西電力に入社。1995年6月に研究開発室研究開発副部長。1998年6月、情報通信室通信システム部長。2000年6月に副支配人IT 戦略グループ チーフマネジャー。2003年6月にケイ・オプティコム取締役、関西電力支配人 経営改革・IT本部副本部長。2007年6月、ケイ・オプティコム監査役、関西電力常務取締役 経営改革・IT本部長。2009年6月にケイ・オプティコム代表取締役社長に就任。現在に至る。趣味は園芸(DIYの庭造り)。

 その後も順調で年度末には60万を超えた。最新の加入件数は約67万(5月22日時点)。今年度中、それも年明けの早い段階で100万を突破したい。

好調な加入件数の増加には何が貢献したのか。

 一つは直営店を充実させたことだ。対面販売で即日SIM渡しが可能になり、顧客の獲得に相当寄与した。2月1日に渋谷センター街で直営店をオープンし、神戸、秋葉原にも直営店を出した。このうち渋谷の直営店にはカフェを併設するなど、携帯大手(MNO)のショップとは別の世界観を打ち出し、宣伝の拠点としての役割も持たせた。認知度は大いに上がった。ただ、来店数はまだ目標に届いていないので、もう1~2割を積み増したい。

MM総研など調査会社の調べではシェアが急上昇して上位5社グループに入った。他社にない強みは。

 ユーザーコミュニティーの「マイネ王」の存在が大きい。ユーザー同士がディスカッションしてリクエストを上げたり、我々が未発表の情報を開示したりして、両者でサービスを作り上げている。この姿勢が評価されて、加入件数の増加につながったところもある。

 ただしコミュニティーの運営は手間がかかる。ユーザーに対して本気で誠心誠意向き合わないと成果は出ない。これは一朝一夕でマネできるものではない。

ユーザー層も広がっている。

 従来は40代や50代の男性でビジネスパーソンが多かった。今では女性層、高年齢層、若年層へと広がっている。

 ユーザー層が一般層に拡大することで新たな課題も生まれている。全国のmineoユーザーでパケットをシェアする「フリータンク」が一時、枯渇の危機に陥った。パケットを入れずに引き出すだけという、助け合いの趣旨に反するユーザーが増えてきたためだ。我々がパケットを入れることも趣旨に反するため、ユーザーに窮状を訴えた。すると危機感を持ったユーザーが自主的にパケットを入れてくれた。我々も引き出しの使い方(規約)を変更して、本当に困っているユーザーだけが引き出せるようにした。そこから急激に回復し、タンクの容量は枯渇危機を迎える前の2倍くらいまでになった。ユーザーと一緒に課題を乗り越えることができた。

ユーザー数が急拡大したことで、昼休みの混雑がひどくなっていたりはしないか。対策は。

 月当たり、2~3回の頻度で、回線の帯域を増強している。これを毎月繰り返している。最低限のトラフィックを通過させるようにしないと、「安かろう悪かろう」のサービスに陥ってしまう。