2017年は日本などで5G(第5世代移動通信システム)のフィールド実験が始まる。近未来の利用シーンやアプリケーションを目にすることができそうだ。5G時代のアプリ開発について、第5世代モバイル推進フォーラム(5GMF)のアプリケーション委員長を務めるインフォシティの岩浪代表取締役に聞いた。

アプリケーション開発者の立場から、5G(第5世代移動通信システム)をどう見ているか。

岩浪 剛太 Gota Iwanami
岩浪 剛太 Gota Iwanami
早稲田大学在学中の1982年にINFOCITY創業、1984年にインフォシティ設立、代表取締役に就任(現職)。コンピュータソフトウエアや通信・放送関連の分野において様々な技術開発を行う。その他、一般社団法人デジタルメディア協会(AMD)理事、一般社団法人映像情報メディア学会(ITE) 副会長、総務省の情報通信審議会および放送・通信関連各種研究会構成員、早稲田大学非常勤講師などを歴任。2014年、第5世代モバイル推進フォーラム(5GMF)のアプリケーション委員長に就任(現任)。2016年、総務省の電波政策2020懇談会サービスWGおよびモバイルサービスTFの構成員に就任。現在、総務省の情報通信審議会 情報通信技術分科会 新世代モバイル通信システム委員会の専門委員や、放送を巡る諸課題に関する検討会の構成員なども務める。

 最初に5Gのスペックを聞いたとき、耳を疑った。LTEがよくできた仕組みだから、その延長上かと思っていたら、「本当に実現できるのか」というほど画期的なものだったからだ。4Gまでは「速くなる」「太くなる」というストレートな進化だったが、5Gについては質的な中身の変化を感じた。加えて海外勢の動きなどから、商用化に向けた通信業界の本気度が伝わってきた。

 よく「5Gならではのアプリケーションは何か」と尋ねられるが、アプリ開発者の立場からすると、5Gの回線に特化して考えてはいない。3GやLTE、あるいは固定(光)回線経由のWi-Fi(無線LAN)も対象になる。その意味で「5G時代のアプリケーション」としてとらえている。

2014年から第5世代モバイル推進フォーラム(5GMF)のアプリケーション委員長を務めている。目標やアクションを知りたい。

 利用シーンの想定やビジョンの策定などを目指し、2つのワーキンググループ(WG)を設置して具体的な活動を進めている。一つは利用シーンWG。このWGでは自動車など様々な産業のプレーヤーに来てもらって、今後の展望、例えば10年後の未来像を話してもらっている。5Gに対する直接的な要望をいただくこともある。

 中でも5Gに関心の高い産業の一つとして、防犯・警備が挙げられる。例えば2020年の東京オリンピック・パラリンピックでは、新たな競技会場のような屋外で人の集まる箇所のテロ対策などを考える必要がある。その場合の高解像度カメラの設置を簡単にしたいという要望がある。固定回線を引っ張らずに済むようにしたいわけだ。

 もう一つの活動としてアプリケーションプラットフォームWGによるものがある。このWGでは、5G以外でアプリ開発に有用な技術を洗い出し、分析・検討している。5G時代のアプリはありとあらゆるところに存在し、データやコンテンツもいろいろな経路を通ってやってくるからだ。通信技術で言えば、Wi-FiのほかにBluetoothやNFCなどの近接無線、IoT(Internet of Things)通信向けのSIGFOXなどが候補になる。

 また、「10年先を見てきたようなことを言う」をテーマに、各業界のリーディング企業が作成している近未来ビデオなど、5Gに関連しそうな映像をただひたすら見続ける会「Future Vision Night」を実施した。あれこれ検討する前に、頭の中を10年後にシフトさせようという狙いだ。そろそろ2回目を実施したいと考えている。