NTTは、中期経営戦略で掲げた営業利益の目標を1年前倒しで2017年3月期に達成できる見通しなど業績が好調。特にNTTドコモの回復とNTT東西の利益成長は目覚ましい。今後の成長の柱に掲げる海外事業、さらには「B2B2Xモデル」の推進などについて、現状の手応えや課題を鵜浦社長に聞いた。

業績は絶好調だ。

鵜浦 博夫 Hiroo Unoura
鵜浦 博夫 Hiroo Unoura
1949年生まれ。石川県出身。1973年に東京大学法学部を卒業し、日本電信電話公社(現NTT)に入社。2002年NTT取締役第一部門長、2007年常務取締役経営企画部門長中期経営戦略推進室次長兼務などを経て、2008年6月に代表取締役副社長新ビジネス推進室長に就任。2012年6月に代表取締役社長(現職)。趣味は、野球観戦や囲碁など。

 絶好調が正しいかはともかく、国内事業は一時期、苦しい状況が続いた。主力の国内事業を立て直すため、2012年11月発表の中期経営戦略で「競争力の徹底的な強化」、2015年5月発表の中期経営戦略では「収益力の強化」を掲げた。NTTドコモによるiPhoneの販売や新料金プランの導入、続いてNTT東西による光回線の卸提供(光コラボレーションモデル)と、順序立てて競争力の強化を図ると同時に効率化を進めてきた。改善の取り組みは順調に来ており、結果として良い数字が出ている。

 ただ、良い数字が出ているからこそ、気を緩めることなく次の展開に向けて取り組むべき。ある意味、固定と移動をグループ内で提供できるということは次のビジネス拡大のチャンスがある。NTT東西は光回線の小売りをやめて楽になったではなく、パートナーを通じて利活用を広げていくことが今後の大きな役割。「B2B2Xモデル」によるコラボレーションを掲げているのもまさしく同じ。次に向かう良いチャンスが来ていると認識している。

海外事業は売上高が順調に伸びているが、営業利益が厳しい。目標達成のためにM&A(合併・買収)は実施しないということだったが。

 売上目標を達成するためだけのM&Aは実施するなと指示している。売上目標に届かないから買収するという発想は絶対にあり得ない。海外事業で重視しているのは利益目標。売り上げは頑張ればついてくる。クロスセルは拡大しており、米デルのITサービス部門の買収により北米でビッグチャンスも生まれる。

 営業利益については、海外の中核メンバーによるワーキンググループを設置して利益創出に向けた施策を議論してきた。取り組むべきことははっきりしており、グループの連携調達によるコスト効率化は極めて順調に進んでいる。グループ内のセキュリティ部門を(2016年8月に事業開始した)NTTセキュリティに集約したのも同ワーキンググループの成果になる。プロダクト(NTTセキュリティ)と営業(各事業会社)を分けたほうが総合力を発揮しやすいと判断した。

 ただ、プロダクトの観点で見ると、グループ内で重複している部分がまだ残っており、場合によっては重複がさらに拡大することも考えられる。今後、様々な技術開発を進めていくうえで、うちもうちもと重複するのは避けたい。だが、方法を一歩間違えると、人材流出のリスクがある。NTTセキュリティへの事業集約でも人員削減が狙いとの誤解が生まれ、営業サイドに不安が走った。このため、もう一段の利益改善を進める自信はあるが、残念ながら時間をかけざるを得ない。取り組みのスピードを意図的に落そうと考えており、場合によっては目標達成が遅れる可能性がある。それでも着実に進める。