Webコンテンツのインターネット配信ネットワーク(CDN:コンテンツ・デリバリー・ネットワーク)世界最大手で、動画配信やWebサイトの高速配信などのインフラを提供する米アカマイ・テクノロジーズ。同社は2017年から、自動車のテレマティクスなどIoT向けインフラサービスを強化する。同社プレジデント兼ウェブ部門ジェネラルマネジャーのリック・マッコーネル氏にアカマイのIoTプラットフォームやその特徴を聞いた。
アカマイが提供するIoT向けインフラサービスの特徴は何か。
まずアカマイの特徴として、高度に分散化したプラットフォームが挙げられる。世界中に20万以上のサーバーがあり、3000以上の拠点、1600以上のネットワークが存在する。この分散化したプラットフォームこそIoTに適したプラットフォームだ。
この環境は、サーバーを中心に一元化した他社のプラットフォームとは異なる。企業のデータセンターやクラウドなど一元化したサーバー群は、IoTでは上手くいかないと考える。IoTでは数十億というデバイス、数百億というエンドポイントが存在する。それが中央サーバーに集中してつながると、コンテンツを受け取る中間点などでボトルネックが生じてしまう。コンテンツを配信する場合も障害が起こる恐れがある。
サービスを提供する主な分野は何か。
アカマイがIoT戦略を考えたとき、まず初めに取り組んだのが自動車向けサービスだ。自動車向けの戦略は大きく分けて三つある。一つはOTA(オーバー・ザ・エア)で、ソフトウエアをコネクテッドカーに配信するものだ。次にDCP(データ・コレクション・プラットフォーム)で、車と自動車メーカーの間で相互通信を可能にするもの。そして最終的に目指すのが車車間の双方向通信だ。
アカマイは2015年からコネクテッドカー向けにOTAサービスを提供しており、既に複数の自動車メーカーと取り組んでいる。今後OTAがさらに普及すると、車のダッシュボードはパソコンのディスプレーのようなものになるだろう。OTAでソフトウエアをダウンロードすると車に新しい機能が追加でき、これまで体験できなかったユーザー体験を提供できるようになる。
OTAは電気自動車(EV)に適している。というのも大容量のバッテリーを搭載しているので、電源がオフの状態でもバッテリーの電力を使ってソフトウエアをダウンロードできるからだ。現在、OTAを利用しているのはEVがほとんどだ。2015年に米国で開催したカスタマーカンファレンスでは、米テスラモーターズに登壇してもらった。
一方、ガソリン車ではバッテリーの容量が小さいため、走行中にアップデートする必要がある。今後、車がどのような状態でも迅速、かつ安全にダウンロードできるようにしていく。今はまだOTAを利用できる利用者は少ないが、今後1、2年で大幅に増やしていきたい。そのためアカマイは、世界中の自動車メーカーと協議を進めている。
我々のプラットフォームを使えば、数万から数十万台の車両に同時にソフトウエアを配信できる。