このところ、日本企業が米国のシリコンバレーに拠点を構え、現地のスタートアップ企業との連携を図ろうとするケースが増えている。シリコンバレーに本社を置く米シスコシステムズは、過去20年にわたり買収や出資を通じて成長を続けている。同社でM&A(合併・買収)事業を手がけるVice President, Corporate DevelopmentのDerek Idemoto氏に現在の注目領域や、M&Aを生かした企業成長のノウハウなどを聞いた。

(聞き手は菊池 隆裕=日経BPイノベーションICT研究所


シスコは買収や出資、連携をうまく生かして企業の成長につなげてきました。企業買収が盛んな米国でも教科書的に語られるほどと聞いています。現在は、どの分野に注目していますか。

Idemoto氏 注目分野を語る前に、シスコのイノベーションについての考えを説明します。長年の経験から、M&Aと出資はイノベーションのツールだと考えています。

米シスコシステムズのDerek Idemoto氏
米シスコシステムズのDerek Idemoto氏
(出所:米シスコシステムズ)
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 と言うのも、「価値ある新しい製品」を創りユーザーに届けるには、外部の優れた企業を買収したり、販売網や宣伝手段を得るためにパートナー化したりする必要があると考えるからです。さらに、投資したり共同開発したりする手段もあります。

 イノベーションのカギとなるのは、市場の変化や破壊的な予兆を的確に捉えることです。これがシスコが最も注目することです。

 この観点で言うと、IoT(インターネット・オブ・シングズ)に関しては過去最大級の市場の変革要素だと捉えています。

 IoT領域の大きな買収事例としては、米ジャスパーテクノロジーズというIoTのプラットフォーム企業があります。この企業以外にもたくさんの投資と共同開発を進めています。連携先は、必ずしも若い会社とは限らず、ファナックのような成熟企業の例もあります。

IoTが特に注目に値する理由は何ですか。