ビッグデータ分析/BI(ビジネスインテリジェンス)製品は大きく、専門家向けと一般利用者向けに分かれる。米クリックテックの「QlikView」は一般向け製品の代表例の一つだ。同社は2014年、新たに「Qlik Sense」と呼ぶ製品の提供を始めた。QlikViewに続く次期製品の開発プロジェクト「QlikView.Next」の第一弾で、一般利用者にとってより使いやすくしたのが特徴だ。日本でもQlikViewの導入が広がりつつあるなか、なぜ異なる製品を投入する必要があったのか。同社製品のビジョン策定・啓蒙を担当するジェームズ・リチャードソン氏に聞いた。

(聞き手は田中 淳=日経コンピュータ

なぜ既存製品のQlikViewに加えて、新たにQlik Senseを投入する必要があったのか?

米クリックテック ビジネスアナリティクスストラテジスト ジェームズ・リチャードソン氏
米クリックテック ビジネスアナリティクスストラテジスト ジェームズ・リチャードソン氏
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 QlikViewを市場に投入してから20年近くたつ。その間に、人々のデータ活用方法は大きく変わってきた。その変化に対応するため、というのが短い答えだ。

 QlikViewが登場した当時、既存のBI(ビジネスインテリジェンス)市場において破壊的ともいえる大きな変革をもたらしたと自負している。それまでのBI(トラディショナルBI)製品はレポート作成が狙いで、そのためにIT部門の力を借りる必要があった。だがそれでは時間がかかり過ぎた。レポートを利用する業務部門の人たち(ビジネスユーザー)は、自分たちが直面する問題に今すぐ答えが欲しいと望んでいた。

 QlikViewはこの課題に対して、より良い解を提供した。あらかじめ「こういう形で探索しなさい」という道筋(分析・可視化の手順)を決めるのではなく、ユーザーが自由にデータを様々な形で探索しながら問題への回答を探っていく「データ探索型のBIツール」という新たな領域を切り開いた。これによってより早く、より柔軟なデータ分析を可能にした。

 ただ、QlikViewにおけるデータ分析は「開発者-消費者モデル」であるという点では、従来型BIと同じだった。開発者の役割を果たす人が分析・可視化のためのガイドを決め、消費者である一般ユーザーはそのガイドに従ってデータを分析・可視化していく、という形だった。それでも従来のBIよりも、問いに対する答えを出すのがより速くなったのは間違いない。

 これに対し、Qlik Senseは「セルフサービス型BI」と呼べる。データを探索し、そこから価値を引き出したいという人が、開発者がいなくても自分自身で情報の視覚化や分析を実行できる。ドラッグ&ドロップ操作で、非常に簡単により多くのデータにアクセスし、分析できるようになっている。

 このように、QlikViewは開発者向けのガイド型BIであり、Qlik Senseは一般利用者向けのセルフサービス型BI、と表現できる。

Excelを可視化・分析ツールとして使うのは危険

 Qlik Senseについて別の言い方で表すと、Excelを代替するツールといえる。多くの企業や組織が、データの視覚化・分析にExcelを利用している。しかし、これは問題が大きい。リスクが大きく、統制も取れない。多くのデータを分解して分析するのも困難だ。