マーケティング責任者の業界団体「JAPAN CMO CLUB」の活動が広がっている。同団体は異業種間の情報共有・交流を通じて、マーケティング活動の普及啓蒙や会員企業の活動改善を図る組織。焦点となるのがITの活用だ。取りまとめ役を務めるセールスフォース・ドットコムの加藤希尊マーケティングディレクター(写真1)は、「企業はITとマーケティングを一体で運用することで、各々の効果をより高められる」と協調。会員である三井住友カードの佐々木丈也ネットビジネス事業部長(写真2)は同団体の活動を通じ「耳障りのいいマーケティング用語ではなく本音が聞ける」と評価する。

(聞き手は玉置 亮太=日経コンピュータ
写真1●セールスフォース・ドットコムの加藤希尊マーケティングディレクター
写真1●セールスフォース・ドットコムの加藤希尊マーケティングディレクター
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「JAPAN CMO CLUB」の活動の狙いを教えてください。

加藤 日本の企業や団体のトップクラスのマーケター同士をつなぎ、日本全体のマーケティングの水準を底上げすることだ。具体的な活動として、年間6回程度の会員同士の意見交換会を通じて知見を蓄積したり、イベントなどで活動の成果を発表したりする。会員企業の業種は製造、流通、サービス、運輸など様々で、現在は約50社。早期に100社を予定している。

 一連の活動を通じて目指しているのが、団体名にもなっているCMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)という職種の役割を高めることだ。日本ではまだ、CMOという職種が確立されているとは言いがたい。日本の企業に合ったCMOの役割を議論したいと考えている。

 セールスフォースが加わっているのは、当社がマーケティング支援のクラウドサービスである「Salesforce Marketing Cloud」を提供しており、顧客のマーケティング活動の成功が当社の第一の優先事項だからだ。会員企業に当社のクラウドを宣伝したり売り込んだりする場にはしない。

写真2●三井住友カードの佐々木丈也ネットビジネス事業部長
写真2●三井住友カードの佐々木丈也ネットビジネス事業部長
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そもそもマーケティングに対する企業の理解をどうみますか。

加藤 徐々に理解は深まっているとは思うが、まだ十分とは言えない。これまで企業のマーケティング活動は個々の企業内に閉じており、同業種や異業種で交流する動きが乏しかった。マーケティング活動そのものに対する意識も、現状はまだ高くない。

 企業が顧客といかにコミュニケーションするか、短期・中期・長期の視点で戦略を立てて戦術に落とし込み、実行する。アナログとデジタルの手段を適切に組み合わせる。こうした活動を通じて、顧客を自社のファンに育てる。これが本来のマーケティング活動だ。

 日本では「販促」と訳されてしまうこともあり、米国に比べて3~4年は遅れている印象だ。

ITやデジタル技術の進展はマーケティングにどう影響するでしょう。