ヤフー(Yahoo! JAPAN)は、同社の米国現地法人YJ Americaが保有する米ワシントン州のデータセンターを12月からテスト稼働させると発表した(関連記事:Yahoo! JAPANが来春より米国DCの利用開始へ、BCP強化)。同社はこれまでデータセンターを日本国内の設備で運用してきており、今回の取り組みは大きな方針転換となる。同社の新たな取り組みについて、Yahoo! Japan全体のインフラを管理するキーパーソンで、YJ Americaでデータセンターの米国進出の陣頭指揮を執る、YJ America Executive Vice Presidentの松谷憲文氏に狙いを聞いた

(聞き手は堀越 功=日経コミュニケーション

写真●YJ Americaの松谷憲文Executive Vice President
写真●YJ Americaの松谷憲文Executive Vice President
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米国内でデータセンターを稼働させた理由を教えてほしい。

 米国進出の検討を始めたのは、1年半から2年前くらいからだ。そもそもYahoo! Japanは、米フェイスブックや米グーグルと戦っていかなければならない。ただフェイスブックやグーグルは、日本にほとんどデータセンターを持っておらず、データセンターのコストは日本よりも米国のほうが圧倒的に安い。彼らと同じ土俵に立つために、米国に進出する必要があった。

 さらに詳しく言えば、データセンターの建物自体のコストは日本と米国ではあまり変わらない。だが電気代は米国のほうが圧倒的に安い。サーバーを大規模に稼働させるほど、日本と米国のデータセンターではコスト構造が変わってくる。まずはこの部分をフェイスブックやグーグルに合わせないと彼らには勝てない。今後は米国に移せるサーバーは移していきたい。

 もう一つ米国に進出した理由は、BCP(事業継続計画)の観点もあった。データセンターを違うリージョンに分散させないと、完全なデータの保全性を保てないのではないかと考えた。さらにデータセンターに納入する機器自体も米国産のものが多く、機器の物流が早い点も考慮した。このような結果、米国にデータセンターを作る形が最適という答えになった。

主に日本国内ユーザー向けにサービスを提供するYahoo! Japanとしては、地理的に近い、アジア地域にデータセンターを作る形もあったのではないか。

 遅延に関していえば、例えば日本のユーザーもフェイスブックなど米国発のサービスを遜色なく利用しており、問題はないだろう。米国と日本を結ぶ太平洋間の海底ケーブルは安価になっており、アジア周りの回線よりも品質がよい。米国内にデータセンターを置かない理由はないだろう。