米デル・テクノロジーズは、2016年10月開催の自社イベント「Dell EMC World 2016」で、ストレージの新製品群を発表した。その中に、2017年前半に出荷を予定する、スケールアウト型NAS「Isilon」のオールフラッシュ構成モデルがある。ITproは、東京で11月16日に開催した「Dell EMC Forum 2016 Tokyo」に合わせて来日したサム・グロコット(Sam Grocott)氏に、オールフラッシュ構成のIsilonなどの新製品について聞いた。

(聞き手は日川 佳三=ライター)

米デル・テクノロジーズ Dell EMC エマージング テクノロジーズ事業部 マーケティング&製品管理 シニアバイスプレジデント サム・グロコット(Sam Grocott)氏
米デル・テクノロジーズ Dell EMC エマージング テクノロジーズ事業部 マーケティング&製品管理 シニアバイスプレジデント サム・グロコット(Sam Grocott)氏
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ストレージ製品の最近のトピックは。

 非構造化データの格納に適したスケールアウト型NAS「Isilon」の新モデルだ(関連記事:スケールアウトNAS「Isilon」に仮想版、階層化はクラウドストレージに対応)。2017年前半に、オールフラッシュ構成の新モデルを出荷する。高さ4Uのきょう体に、SAS接続型のSSD(ソリッドステートドライブ)を60個搭載する。

 使っているSSDの容量に応じて、3モデルで構成する。最大容量モデルは、容量15.4TバイトのSSDを60個使い、全体で1ペタバイトになる。

 1ノード当たりの性能は、I/O処理能力が25万I/O毎秒、データ転送速度が15Gバイト毎秒になる。スケールアウト時は、容量が最大で100ペタバイト、データ転送速度が最大で1.5Tバイト毎秒になる。

フラッシュ構成に合わせてOSも強化したのか。

 オールフラッシュモデルの追加に合わせて、OSのOneFSもフラッシュに最適化した。例えば、フラッシュの寿命を伸ばす策として、書き込み回数を減らす工夫を施したほか、特定領域に書き込みが集中しないように制御するウエアレベリングなどの機能を搭載した。

 ノード間の自動階層化機能も強化した。HDD(ハードディスクドライブ)を搭載した既存のSシリーズ(SAS HDD主体)、Xシリーズ(SATA HDD主体)、クラウドストレージ、という3階層に加えて、新たにオールフラッシュモデルを階層に組み込めるようにした。

 自動階層化では、複数のノードで構成するストレージプール全体がシングルイメージのファイルシステムに見え、バックグラウンドで自動的にノード単位で階層化されてデータが移動する。

 自動階層化機能によって、オールフラッシュ構成の性能を安価に利用できるようになる。具体的には、オールフラッシュ構成のモデル1台(容量100Tバイト)と、そのほかのHDDベースのIsilon(容量900Tバイト)を組み合わせた容量1ペタバイトのシステムは、Gバイト単価が50セント以下になる。

ユーザーにとってのインパクトは。

 Isilonが適する産業領域は、大きく三つある。映像を扱うメディア業界、半導体製造業界、遺伝子データなどを扱うライフサイエンス業界、だ。このほかに、全産業に共通する用途として、HadoopやSplunkなどに蓄積したビッグデータを分析してビジネスに役立てる、という需要がある。

 非構造データを格納するストレージには、五つの要件がある。Isilonは、これらを満たしている。要件とは、(1)高性能であること、(2)容量や性能を拡張できること、(3)各種のプロトコル(ファイル、オブジェクト、HDFS、そのほか)でデータにアクセスできること、(4)企業が要求するデータ保護機能やセキュリティ機能を備えること、(5)階層化による経済性、だ。

 オールフラッシュ構成のIsilonがユーザー企業に与えるインパクトは、データ分析速度が向上することによって、ビジネスがスピードアップすることだ。例えば、ライフサイエンス業界の例では、従来であれば1週間かかった遺伝子解析の処理が1日で終わるようになる。

ほかの注目すべきトピックは。

 「Elastic Cloud Storage」(ECS)の最新版(バージョン3.0)を提供する(関連記事:汎用PCベースで価格を抑えたストレージ「EMC ECS」がNFSアクセス可能に)。サーバー内蔵ストレージやクラウドストレージなど各種のストレージを束ねてオブジェクトストレージやファイルストレージとしてアクセスできるようにする製品だ。

 ECSは、複数台のPCサーバーに分散ブロックストレージソフトの「ScaleIO」を導入してブロックストレージを構成し、これをストレージプロトコル変換ソフトの「ViPR Data Services」を介してオブジェクト、NFS、HDFSとしてアクセスする形になる。

 ECSは、ストレージリソースとして、遠隔拠点を3拠点までつなげられる。ECSの新バージョンである3.0では、このうちの一つを米バーチャストリームのクラウドストレージに置き換えられる。これにより、オンプレミスのストレージとクラウドストレージを混在させて使えるようになる。

 米バーチャストリームのクラウドストレージのほかにも、Amazon S3、OpenStack Swift、EMC Atmosなどのオブジェクトストレージを利用できる。また、米デル・テクノロジーズのアーカイブ専用ストレージ「Centera」を利用できる。