富士通は2014年10月28日、ベトナム最大手のICT企業であるFPTコーポレーションと提携し、同国で農業クラウドサービス「Akisai」の実証実験を開始すると発表した。アジアでの事業拡大に力を入れる富士通。田中達也執行役員常務Asiaリージョン長と廣野充俊執行役員イノベーションビジネス本部長に、同社の戦略とビジョンを聞いた。(聞き手は岡部 一詩=日経コンピュータ)


富士通の田中達也執行役員常務Asiaリージョン長
富士通の田中達也執行役員常務Asiaリージョン長
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ベトナムで農業クラウドに挑戦する経緯は。

田中:ASEAN経済共同体(AEC)の発足後は、国ごとに特色を出さなければ淘汰されてしまう。ベトナムは国家として農業生産で特徴を出そうとしている。当社はちょうど、農業クラウドサービス「Akisai」を持っていた。ベトナムがASEAN、あるいは世界の農業生産国になることを目指すのであれば、当社はそれに貢献できる。これは一つの「縁」だ。この縁を生かして成功に導くことができれば、ICTを活用した農業振興ソリューションを他国にも展開する足がかりになる。

富士通の廣野充俊執行役員イノベーションビジネス本部長
富士通の廣野充俊執行役員イノベーションビジネス本部長
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廣野:ベトナムの農業は、課題を抱えている。国からの投資が、十分に振り向けられていないことだ。ハイテクパークの建設などへの投資に力を注ぐ一方、10年前に土地を民間開放して以来、農業への投資額は14分の1まで減っていると聞く。人口の70%を占める農家の生産性は下がっており、農作物の物価は上がっている。農業に対して、何か手を打たなければならないという危機感を国として持っている。

 Akisaiがアジアの農業に最適な仕組みを備えていることもポイントだ。例えば、世界第2位の農業輸出国であるオランダは、国を挙げて農業に力を注いでいる。ただし同じ農業といっても、オランダでは農作物を加工した製品が70%を占める。収穫して、そのまま食べるための農作物を中心に生産する日本、中国、ベトナムとは異なる。温度や湿度などをきめ細かく管理して、農作物の生産、ひいては輸出を支援する機能を備えたAkisaiは、アジアの農業にフィットするはずだ。