「ミドルのマネジメント力強化研修」と聞けば、ほとんどの人が、講師から行動上のチェックポイントや他社事例などを教わる「講義」スタイルの風景を思い浮かべるだろう。こうした座学スタイルのミドル研修に真っ向から異を唱えるのが、ジェイフィール取締役の重光直之氏だ(写真)。
「ミドルの行動は、自分自身の体験に学んでもらうことでしか変えられない」と重光氏は主張する。この理念は、カナダの有名な経営学者に学んだもので(関連記事1)、「ミドルが自分自身の体験に学べる場」を作る同社の手法「リフレクション・ラウンドテーブル」は実際に、富士通マーケティングやインフォコム、日本たばこ産業IT部といったITベンダーまたはユーザー企業のIT部門で取り入れられた実績もある(関連記事2)。また日経コンピュータ2013年10月17日号~12月26日号における連載記事「プロマネに役立つ『内省術』」でも重光氏は同手法の概要を解説した。
体験しなければなかなかわからない「なぜミドルは自分自身の体験を振り返り学ばなければならないのか」という点について、詳しく見解やエピソードを聞いた。
「内省」がミドルの行動を変えるのに効果的ということですが、似たような企業研修で座禅を組む例もあります。内省の場づくりというのはそれらとも違うのでしょうか。
自分の経験を振り返るという意味では似ているのですが、一人ひとりの心の中だけで行うのではない点が大きく違います。良い内省をして気づきを得るには、他人からの「良き問い」が必要なんです。悩みをある程度分かり合える同じ階層同士が集まって行うことを推奨しています。
独りで振り返るだけだと、なぜ駄目なのでしょうか。
マネジメントをする立場の人は多くの業務をこなして忙しく立ち回るあまり、問題の原因を見誤ることが多いのです。そしてマネジメント上の課題を挙げてくださいといえば、ほとんどが他責、すなわち上か下のせいにしてしまうのです。それではなかなか解決の糸口は見えてきません。
これは日本企業のマネジャーに限ったことではありません。海外企業にもそうした人が少なくないようです。カナダの経営学者、マギル大のヘンリー・ミンツバーグ教授は、有名企業のCEO(最高経営責任者)であっても、自分に甘く部下に厳しいタイプの人を「ナルシストは会社をダメにしてしまう」などといった表現で実名を挙げて辛辣にこきおろすことがあります。