オープンデータで世界唯一のサービスを手がける新興企業がある。全国6500カ所を超える公立図書館や大学図書館の蔵書や、米アマゾン・ドットコムなどの書誌データベースを一挙に検索できるカーリルだ。

 政府や地方自治体などが保有するデータを商用目的も含めて二次利用できるようにするオープンデータ。カーリルが開発したサイトやアプリでは複数の図書館の蔵書を一度に検索したり、図書館にない本の情報も調べられる。

 カーリルは2014年9月に、スマホの屋内位置を測定するビーコンデバイスを利用して、検索した本が図書館のどの本棚にあるかをスマートフォンに表示するアプリ「カーリル図書館マップ」で実証実験を始めた。図書館にどの所蔵資料が多く貸し出されているかというデータを試験提供もしている。

 岐阜県中津川市にある本社で吉本龍司代表にオープンデータ活用ビジネスの舞台裏を聞いた(写真1)。

(聞き手は大豆生田 崇志=日経コンピュータ


写真1●吉本龍司カーリル代表。インタビューは8月に行った
写真1●吉本龍司カーリル代表。インタビューは8月に行った
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図書館のオープンデータでアイデアを次々と打ち出している

 カーリルは図書館でもっと面白いことをやりたいと考えています。生活の中で使えるウェブサービスって何だろうと考えて、図書館に行き着いたのです。生活の中で使えるということは裾野が広くなる。実はそれまで地元の図書館の貸出カードすら持っていなくて、始めたあとにとにかく図書館の人と仲良くなろうと、夜中の図書館を借りて動画をUSTREAMで流すイベントを開いたりしました。

写真2●「カーリル図書館マップ」の地図画面
写真2●「カーリル図書館マップ」の地図画面
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 最近リリースした「カーリル図書館マップ」ではスマートフォンのアプリで図書館の本を検索すると、屋内位置情報を測定するビーコンデバイスを使って何階のどの書庫に本があるか探せます。名古屋大学附属図書館や鯖江市図書館、伊勢市立伊勢図書館などで新しい図書館サービスの実証実験をしています(写真2)。

 もう1つ、館内の案内図を表現できるデータ作成のためのエディタの開発に取り組んでいます。図書館は日本十進分類法(NDC)というルールに基づいて、Excel方眼紙でA4用紙で案内図を頑張って作っています。でも新しい図書館ほど丸テーブルなどがあってExcelでは表現できない。そこでカーリルは大手メーカーのテーブルの幅などのデータを集めて、汎用的なデータ形式を作ろうとしています。