小学生にプログラミングを教えることはもはや珍しくないが、5才児から始めるとなると極めて先進的な取り組みといえるだろう。新刊『5才からはじめるすくすくプログラミング』の著者で、すでに5才児を対象にしたワークショップを数多く実施している橋爪香織氏に、その目的や方法、保護者の反応などを聞いた。
5才からプログラミングを学ぶ目的を教えてください。
子どもにとって、日常の体験はすべて学びにつながります。天気の良い日の外遊び、雨の日の家遊び、幼稚園や保育園で約束を守ること、先生の話を聞くこと、困ったことを自分の意志にしたがって解決することなど、未就学児の日常には、さまざまな学びの場があります。ですから、なにもわざわざ5才からプログラミングを“しなければいけない”とはまったく思っていません。
しかし、近年の子どもたちを取り巻く環境は、大きく変わってきています。ほとんどの家庭に、スマートフォンやタブレット、パソコンが備わり、だれもがインターネットやソーシャルメディアを日常的に使えるようになりました。
だからなのか、子どもが保護者と向き合う時間よりも、デジタルデバイスと向き合う時間のほうが長くなっている気がしています。子どもたちはゲーム端末に夢中になってゲームをしたり、タブレットで延々と動画を見たりして、「時間消費型コンテンツ」に長い時間を費やすことが日常になっているのではないでしょうか。
タブレットなどのデジタルデバイスを使う時間が多くなってきているのであれば、その時間を学びに変えることはできないか。そう思っていたところに、ScratchJrとの出会いがありました。
このScratchJrは、米MITメディアラボが開発したiPadで動作するアプリケーションです(Android版も開発中)。無料で提供されており、小さなお子さんが自分だけの動く絵本やゲームを、プログラミングという手段を用いて作成できます。現在、世界で300万人以上の子どもたちが楽しんでいるプログラミング環境「Scratch」の入門的位置づけで、漢字の読めない5才のお子さんでもパズルを組み合わせるような感覚で自分のアイデアを形にしていく、言い換えればプログラミングをしてキャラクターを思い通りに動かすことができます。