オープンソースのIaaS構築基盤ソフトウエア「OpenStack」をテーマにしたグローバルイベント「OpenStack Summit Tokyo」が、10月27日から30日までの4日間、東京・品川で開催される。今回初めて日本で開催される本サミットには、世界中からOpenStackの技術者が集まり、最新の技術や事例が議論される予定だ。今回のサミットを主催するOpenStack FoundationのCOO(最高執行責任者)、Mark Collier氏に、OpenStackの現状やOpenStack Summit Tokyoで注目すべきポイントなどを聞いた(文書によるやり取りを基に構成)。

(聞き手は森重 和春=日経Linux


写真●OpenStack FoundationのCOO、Mark Collier氏
写真●OpenStack FoundationのCOO、Mark Collier氏
[画像のクリックで拡大表示]

最新のOpenStack導入状況を教えてほしい。

 ユーザーによるOpenStackの採用は、地域・業種を問わず拡大している。ここ1年ほどの間に顕著だったのは、大規模システムへの導入の伸びだ。OpenStack Summit Tokyoでは、日本企業はNTTや富士通、Yahoo!Japan、キリンなど、国外の企業はBMW、Visa、Time Warner Cableなど多種多様な業界の企業が登壇を予定しており、OpenStackの利用の広がりを象徴している。

OpenStackは今年に入って「コアの再定義」を掲げ、OpenStackを構成する各種プロジェクトの位置付けを整理するとしていた。その進捗は。

 コアの再定義については、前回日本で講演した2月から大きな進展があった。具体的には、現在6プロジェクトを「Big Tent」と呼ぶ中核サービスに位置付け、その他のプロジェクトがぶら下がる形になった。Big TentにはNova(コンピュート)、Swift(オブジェクトストレージ)、Neutron(ネットワーク)、Cinder(ブロックストレージ)、Keystone(認証)、Glance(イメージ管理)が含まれる。

 Defcore Committee(コア定義委員会)では現在、コアに位置付けたプロダクトの安定性、信頼性、アップグレードの容易性、スケーラビリティーの向上に努めている。コアとそれを取り巻くプロジェクト全体をより簡単に導入、アップデートできるようにしていく。

最新のOpenStack開発ではどういった内容の改善にフォーカスしているのか。

 10月15日にリリースした新版「Liberty」では、エンタープライズユーザーやサービスプロバイダーに対して、さらなる管理性、スケーラビリティー、機能拡張をもたらす。例えば、よりきめ細かくシンプルなアクセスコントロール機能を備え、大規模導入を想定した性能・安定性の向上を実現した。さらには、コンテナーやベアメタルサーバーに単一の仮想マシンプラットフォームを提供する。

OpenStack Summit Tokyoでは何に注目すべきか。

 本サミットでは特に、最新のクラウドコンピューティングに統合されるテクノロジーに注目したい。例えばコンテナー管理や、パブリッククラウド、ネットワーキングといった技術だ。サミットでは、最新のSDN(Software-Defined Networking)に関する動向や技術の詳細に関するセッションが数多く設けられており、これには、現在進行中のOpenStack Neutronプロジェクトが含まれる。次世代の通信事業ネットワークのほか、NFV(Network Functions Virtualization)、IoE(Internet of Everything)といった新興のテクノロジーについても活発に議論されるはずだ。

 サミットの基調講演では、アジア太平洋地域における新たな導入事例についても紹介する。コミュニティーからは、クラウドの互換性やID Federationに関する進捗も報告される予定だ。