米Appleのスマートフォン/タブレット用OSの新版「iOS 8」が2014年9月17日にリリースされてから1カ月が過ぎた。Apple自身が深刻な不具合を含むアップデートを取り下げるなど様々な混乱が起きている(関連記事:バグ修正のアップデート「iOS 8.0.1」で深刻な不具合、公開を即停止)。この混乱に巻き込まれる開発者も少なくないようだ。手書き入力アプリ「mazec(マゼック)」で混乱に見舞われたMetaMoJi(メタモジ)の浮川和宣代表取締役社長と、浮川初子代表取締役専務(写真1)に経緯を聞いた。
iOS 8と共にリリースされた手書き入力アプリ「mazec」(写真2)は、最初のバージョンで「フルアクセスの許可」を求めるメッセージが出たり、その後更新したバージョンをApp Storeから取り下げたりする出来事があった。
初子専務:mazecは「Keyboard Extention」というiOS 8で初めて導入された新たなアプリ形態で開発されている。Windowsでいうところの「IME」のようなものだ(関連記事:MetaMoJiがiOS 8用「mazec」リリース、アプリに直接手書き入力)。
このKeyboard Extentionに関する処理で問題が生じた。mazecの最初のバージョンでは、起動時に「フルアクセスを許可しますか?」というメッセージが出た(写真3)。「(Keyboard Extentionの)開発元に、過去にこのキーボードを使用して入力した内容を含めたすべての入力内容を転送すること」を求めるものだ。多くのユーザーは驚くだろうが、許可しないとmazecが動かないという問題があった。
和宣社長:「フルアクセス」を許可しなくても動作するmazecの更新版をすぐに用意してAppleに審査申請を出した。10月3日にApp Storeに掲載されたが、インストールしても正常に動作しない状態のものが掲載されてしまい、取り下げざるを得なくなった。これはKeyboard Extentionという新しいアプリ形態に不慣れなApple側のミスだったようだ。
取り下げたのは、私がまさにiOSのユーザー会で講演していた時だった。いつもなら「ぜひmazecをインストールしてみてください」と言うところが、今回はできなかった。ユーザーに迷惑をかけた。私にとっても残念だった。