開発と運用が一体となってタイムリーにシステムを提供する開発・運用手法「DevOps」。その概念は理解できても、実践にあたって頭を悩ますIT担当者は多いのではないか。DevOpsの取り組みを小説仕立てで分かりやすく解き明かした書籍『The DevOps 逆転だ!究極の継続的デリバリー』の監修を務めたIBMディスティングイッシュトエンジニアの榊原彰氏に、DevOps成功の秘訣を聞いた。

(聞き手は田島 篤=出版局)


写真●日本IBM スマーター・シティー事業 CTO IBMディスティングイッシュトエンジニア 技術理事 榊原 彰氏
写真●日本IBM スマーター・シティー事業 CTO IBMディスティングイッシュトエンジニア 技術理事 榊原 彰氏
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なぜ今、DevOpsが注目されているのか。

榊原氏 一言でいえば、ITシステムに求められる役割が変化しているためだ。

 では、なぜ、役割が変化しているのか。それは、世の中の移り変わるスピードがますます速くなっている、換言すれば、ビジネス・ニーズの変化がより速くなっているからだ。

 素早く変化するビジネス・ニーズに即応するために、ITシステムの役割は、柔軟性や機敏性を重視する方向に変化している。従来のような「業務効率化の支援」よりも、「必要に応じて迅速に立ち上げて機能拡張・修正できること」の方が重要になる場面が増えているというわけだ。

その役割を担ったITシステムの構築運用でDevOpsが必要になるのか。

榊原氏 そうだ。IT担当者の立場からすると、開発・運用手法のDevOpsという言葉になるのだろうが、本来目指すところはビジネスとITが一体化しているという意味で「BizIT」とでもいうべきところだ。

 IT側から見ると、開発と運用の2部門を一体化する図式で捉えがちだが、見方を変えると、実質的にはビジネスとITが一体化することだ。ITでの開発・運用だけを見るのではなく、「運用=日々のビジネス活動そのもの」という観点で見るべきだ。それだけ、ビジネスとITが密接に結び付いているのが、先進的な企業情報システムの現状だ。

なるほど。ITシステムだけにフォーカスしていてはダメだと。

榊原氏 何のためにITシステムが必要なのかという本質を忘れてはならないということ。そして、物事を最適化するプロセスにおいて、どこまでを対象にするのか、という問題でもある。