2015年4月に設立されたソニー・グローバルエデュケーション。同社はオンラインの算数大会である「世界算数」を主催しており、9月27日に「第二回 世界算数」を開催する(関連記事)。これに先行して9月20日には、埼玉大学のSTEM(Science、Technology、Engineering、Mathmatics)教育研究センターとの共催で「世界算数」の公開コンテストを同大学で開催した。同社の代表取締役社長である礒津政明氏に、世界算数の展開やソニーグループとしての教育への関わりなどについて聞いた。

(聞き手は大谷 晃司=コンピュータ・ネットワーク局教育事業部)


そもそもなぜ「算数」の世界大会を開催するのでしょうか。

ソニー・グローバルエデュケーション 代表取締役社長の礒津政明氏
ソニー・グローバルエデュケーション 代表取締役社長の礒津政明氏
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 「算数」は科目の一つですが、非常に幅広いジャンルをカバーしている科目です。一つの科目と言ってしまうにはもったいない内容であり、日本独特の文化と言えます。我々は「算数思考力」という言い方をしています。英語に訳すとマスマティクス(Mathmatics)となるのでしょうが、算数は微妙に違うんですよね。

 算数はある意味国語的な能力も必要で、論理的思考力を鍛えるような非常にいい問題がそろっています。受験算数にはカリキュラムを超えたような難問が出てきますが、それらは非常にいい問題で、過去何十年にもわたって蓄積されています。これらは世界に誇れる非常にいいコンテンツです。

 我々はここに目を付けて、まず海外に向けて問題を輸出するだけでも大きなビジネスになるという感触を得ました。日本が誇る思考力問題を海外に展開できる仕組みを作っていこうということで考えたのがコンテストです。算数は子供だけでなく、大人も楽しめる問題がたくさんあります。こうした点も日本独特の文化であり、年齢を問わず、子供から大人まで受けていただけるようなコンテストを開催しようという形にしました。

 第1回の世界算数は、約2万人の方が全世界から登録してくれました。国で言うと80カ国以上です(編集部注:世界算数は、日本語、英語、中国語の三カ国語で開催)。その際、アンケートに7000件ほどの回答があり、非常に熱心に自由記述欄も書いてくれました。そのアンケートの95%くらいが「問題が面白い」と言ってくれるんです。勉強の問題で面白いといっていただけることはあまりないと思います。面白いと言ってもらえるテストは新しいチャンスになると確信し、これを大々的に広げようということで第2回を開催する運びとなりました。

 海外では「算数」を表すちょうどいい訳がありません。中国でも「算数」という漢字はあるんですが、日本で言うところの数遊びのような子供じみたイメージが付いてしまうため、中国では「世界趣味数学」といった名前を冠した大会にしています。「趣味」は日本語でいうところの「楽しい」といった意味があるそうです。英語では「Global Math Challenge」、日本では「世界算数」で、ブランドは統一されていません。理想的には「算数」を「数独」のように、世界で認知度を上げたいと思っています。

算数の問題を英語や中国語に翻訳するハードルは高そうです。

 ハードルはあります。文章題の翻訳は本当に大変で、そこが実はノウハウになると思っています。絶対に外注はできないと感じたので、中国語の翻訳メンバーを内部に入れて訳しています。随時日本人のスタッフとやり取りして細かいニュアンスも気を付けるようにしています。表現一つで問題の難易度が変わってしまいます。「英語で受けた方が簡単だった」ということも当然あるわけで、そこを気を付けるようにはしています。