スマートフォン決済のパイオニアである米スクエア。スマホやタブレットのイヤホンジャックに小型端末「Squareリーダー」を差し、無料のPOS(販売時点情報管理)ソフトをインストールすれば、決済端末として利用できる。初期導入コストが無料で、かつ決済手数料が定額制ということもあり、グローバルでは数百万店、日本でも数万店に導入数が拡大している。米アップルが開始予定のNFC採用のモバイル決済サービス「Apple Pay」、および日本市場の現状について、スクエアの法務渉外担当役員であるダナ・ワグナー氏に話を聞いた。

(聞き手は原 隆=日経コンピュータ


米スクエアの法務渉外担当役員であるダナ・ワグナー氏
米スクエアの法務渉外担当役員であるダナ・ワグナー氏
[画像のクリックで拡大表示]

米アップルがNFC決済「Apple Pay」を発表した。スマホ決済で先行するスクエアにとって、影響が大きいのでは。

 我々にとって(アップルの決済市場参入は)とてもポジティブだ。Apple Payが広がれば、スマートフォンで支払いをするという行為そのものの認知が広がる。だが、アップルと我々では、そもそも立つ側が異なる。アップルは買い手側にイノベーションを起こそうとしているが、我々は事業開始時から一貫して売り手側に寄り添ってきた。クレジットカード決済環境を導入できない店舗にイノベーションを起こしてきたのが我々だ。会社にとってのインパクトはそれぞれだろうが、我々にとっては追い風と見ている。

 NFCであれ、デジタル通貨であれ、新しい決済方法が出てくれば、それを受け入れればいい。スクエアの強みでもあるが、1つのプラットフォームに我々は依存していない。米グーグルのAndroid OS搭載端末でも、iPhoneやApple Watchでも、我々は対応できる。

 だが、実際にはまだ発表されたばかりだし、定着するかどうかは分からない。Apple Payがどのように進展していくのか慎重に見守る必要がある。

Apple Payが広がらない可能性もある?

 僕はEx-Google(グーグル出身)だし、持っている端末はアンドロイドだから、分からない(笑)。1つ言えるのは、スクエアは常に自分たちがポケットに持っているもの、つまり携帯電話決済端末として使えるようにした。NFCは(ハードウエアが別途必要になるという意味でスクエアの戦略には)当てはまっていない。将来的には広がるのかもしれないが、一番の問題は「コスト」だ。投資に見合うだけのインセンティブが小売店側に示されていないのが現状だ。誰かがそのコストを肩代わりすれば、状況は変わるかもしれない。だが、今のところ米国でもその問題がつきまとい、NFCが普及しているとは言いがたい状況だ。