米ネットギアは2016年9月1日、10Gビットイーサネット(10GbE)に対応したNASの新製品「ReadyNAS 500/600シリーズ」を発表した(プレスリリース、ITproの記事)。同社でNAS製品の責任者を務めるリチャード・ヨンカー氏に、10GbE対応の理由などを聞いた。
まずNAS製品に対する戦略から教えてほしい。
当社では以前はコンシューマー向けの「100シリーズ」という製品も販売していたが、現在では販売していない。最近はビジネス向けに大きくフォーカスしている。2013年前半に発売したスモールビジネス向けの「300シリーズ」は好調であり、今回、10GbEに対応した500/600シリーズを新たに追加した。
なぜNASに10GbE対応が必要なのか。
環境が大きく変化したからだ。300シリーズを発売した3年前に比べて、ネットワークのユーザー数もデータ量も大きく増加した。クラウドの利用も一般化し、クラウドのオフィススイートといったアプリケーションが広く使われるようになってきている。クラウドにデータを置くことも増えた。
ネットワークに接続する端末の種類も増えた。従来のデスクトップパソコンに加えて、ノートパソコン、スマートフォン、タブレット、IoT機器など、多様な端末が使われるようになっている。モバイルの普及から、無線LANが一般的になってきた。さらにIEEE 802.11acの登場で無線LANの通信速度も上がってきている。
動画の利用も一般的になってきた。しかも、動画の解像度はどんどん上がってきている。
そうした環境の変化でネットワークの帯域が必要になったのは理解できる。しかし、クラウドにデータを置くのであれば、NASの通信の高速化は必要ないのではないか。
それを理解するには、企業ユーザーがどのようにクラウドを利用しているかという実態を知る必要がある。クラウドにはプライベートクラウドとパブリッククラウドがある。実際には、パブリッククラウドしか使わない企業は10%、クラウドを利用せずローカルストレージだけの企業も10%程度しかない。残りの80%は、ローカル、プライベートクラウド、パブリッククラウドをハイブリッドで利用している。どこの割合が多いかは企業によって異なるが。
ReadyNASはローカルでの利用に加え、プライベートクラウドでもリモートアクセスで利用できる。パブリッククラウドのデータも、ローカルのReadyNASと同期を取ることができる。
ReadyNASを利用してストレージサービスを提供している企業もある。代表的なのが米イグナイト(Egnyte)だ。例えば、イグナイトはストレージ全体を仮想化し、ファッションブランドのコーチ(COACH)に提供している。
10GbE対応のメリットをもう少し具体的に教えてほしい。
NASの主な用途は「バックアップ」「ファイルサーバー」「仮想ストレージ」だ。バックアップを例に取ってみよう。1Gビットイーサネット(1GbE)にしか対応していない300シリーズだと、バックアップデータが大きい場合にはリカバリーに丸1日かかることがあった。10GbEに対応した新製品であれば、この時間を大幅に短縮できる。