「ITエンジニアには会議室は不要。定例の報告会も廃止した」。こう語るのはスマートフォン向け広告会社CyberZの山内隆裕社長だ。同社は7月にオフィスのレイアウトを刷新し、ITエンジニアのフロアから会議室をなくした。狙いは開発に専念させること。エンジニアにとって働きやすい環境を整え、全社員に占めるエンジニアの比率を現在の3割未満から年内に4割以上へ高める。

(聞き手は玉置 亮太=日経コンピュータ


アジア太平洋地域のスマホ広告市場は2014年に前年比2.5倍の1兆2000億円規模との推計を発表しました。

 はい、日本国内はもとより、アジア太平洋地域全体でインターネット広告のスマホシフトが進むと見ています。最も大きいのは中国で、2014年は前年比4倍近い7100億円規模でした。ほかにも韓国が2018年に、2014年の約2.3倍の1900億円と高い伸びが期待できます。東南アジアも小さいながら大きく伸びる余地が見込めるなど、全般に高成長を見込んでいます。

写真1●CyberZの山内社長
写真1●CyberZの山内社長
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 ただ、国や地域によって当然ながら市場動向は異なります。ゲーム企業やEC企業、メディア企業など、現地への進出を目指す日本の企業は各国の市場や国民性、ビジネス慣行などを踏まえてマーケティング戦略を練る必要があります。

 ゲームを例に挙げれば、韓国市場は保守的で、ある一つのゲームが爆発的に広がりやすい。ある新作ゲームのお披露目イベントを開いた際にも、日本ならおしゃれなカフェを使おうと考えそうですが、韓国ではトッポギ料理のチェーン店を貸し切って開いたこともあります。ほかにもインドや東南アジアは貧富の差が激しかったり、アプリのデザインやキャラクターの絵柄の好みも国によって違ったりと、実に多様です。

 当社は韓国や台湾の支社や現地の市場調査を通じて、スマホを使った日本企業の現地マーケティングを支援します。売上高の海外比率は現在、15%程度です。今後はアジアを中心に海外比率を高め、3年で35~45%にすることを目指しています。

事業拡大には開発生産性を高めることが欠かせません。

 その通りです。当社の事業はスマホ広告の配信管理や効果測定といったツールの開発と提供、これらを活用した広告運用支援です。競争力を高めるには、より優れたツールの開発が不可欠。それにはITエンジニアの質と量を高めることが必要です。