顧客から預かった大量のビットコインを消失させた2014年2月の「Mt.Gox事件」以降も、ビットコインの販売・取引を手がける国内スタートアップ企業が相次ぎ登場している。事件以降、セキュリティや不正防止など、社会に受容されるための対策は進展したのか。2014年5月に一般向けサービスを始めたbitFlyer 代表取締役の加納裕三氏(写真1)に聞いた。

(聞き手は浅川 直輝=日経コンピュータ


bitFlyerのビジネスモデルを教えてほしい。

写真1●bitFlyer 代表取締役の加納裕三氏
写真1●bitFlyer 代表取締役の加納裕三氏
[画像のクリックで拡大表示]

 bitFlyerは「ビットコイン取引所」ではなく「ビットコイン販売所」だと位置づけている。海外の取引所のように売り注文と買い注文をマッチングさせるのではなく、当方が受給に基づいて算出した価格に基づき、我々と顧客がビットコインを直接売買する形になる。2014年4月に招待制で公開、5月に一般公開した。

 スプレット(売値と買値の価格差)は価格変動の状況にもよるが、現状では3.5%ほどだ。国内ではスプレッドが数十%になるサービスもあり、比較的リーズナブルと考えている。

Mt.Gox事件では、顧客が取引所に預けていた大量のビットコインが失われた。bitFlyerのセキュリティ対策は。

 Mt.Gox事件が発生した当時、我々はサービス開始に向け準備中だったが、この事件を受けてリリース予定を遅らせ、セキュリティを強化した。

 顧客から預かったビットコイン資産の大半は、オフラインのサーバーに保存する「コールドワレット」の形で管理している。当座の取引に必要なビットコインのみ社内ネットワーク上で扱い、必要に応じてコインを出し入れするイメージだ。

ビットコインの取引はその匿名性から、マネーロンダリングに悪用されるリスクがある。不正防止の手段は。

 顧客の銀行口座を確認することで、本人確認の代替にしている。銀行口座は、開設の際には銀行が本人確認を実施済みだからだ。

 顧客がbitFlyerにアカウントを開設する際、取引の原資としてデポジットする現金を、銀行口座から当社の法人口座に振り込む。当社はこの振込を確認した上で、顧客の銀行口座に対し、1円を振り込む。顧客が登録した銀行口座情報に誤りがあれば振込は失敗するので、これで銀行口座の存在を確認できる。8月中旬からは、本人確認によるアカウントのアクティベーション(有効化)について、これまで1日以上かかっていたところを数時間で完了できるよう、サービスを改良した。